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京都 『丹波ワイン』

大阪を離れ、次は京都へ。
関西ワイナリーめぐりの旅、最後にうかがうのは丹波ワインです。

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JR園部駅からバスで揺られること30分。そこからさらに10分ほど歩きます。
停留所からの道中には、道標代わりの看板やのぼりがたくさん。

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この日の朝、大阪では前日に続いて雪がちらついていたため、京都はもっと寒いんじゃないかと覚悟していました。
でも幸いなことに思ったほどではなく、ひと安心。

出迎えていただいたのは醸造担当の内貴さんと栽培責任者の末田さん。
内貴さんは非常に魅力的な女性で、帽子がとてもよくお似合いです。
人柄がうかがえる、さっぱりとした明るいトークに惹きつけられます。

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末田さんはワイン造り、そしてワイナリーのすべてを知る生き字引のような人物です。
しかもなお、さまざまな新しい試みに意欲的。
「早くしないと定年になっちゃうから、急いでるんです。」
淡々と語る口調には、飄々としたユーモアが感じられます。

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今回、お会いした造り手の方々に共通して感じられたのが、このなんともいえない「おかしみ」。
出身は関西ではない方でも、やはりご当地の文化の影響でしょうか。
どなたも冗談めいた言葉の奥に、人間味が透けてみえる気がします。

末田さんと内貴さんのお二人も、傍から話を聞いているだけで楽しくなる名コンビ。
チームワークのよさが伝わってきます。
こんな風通しの良さは、必ずワイン造りにも反映するはず。

実は今まで丹波ワインには
『百貨店の銘酒売り場に並んでいるワイン』というイメージを持っていました。
そのせいか、勝手に敷居の高さのようなものを感じていたのですが
現場のお二人は本当に気さくな方たちでした。やっぱり思い込みはよくないですね。

まずは畑を見せていただくことに。
自社畑はワイナリーの敷地内。建物の目の前に広がっています。

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大阪では山の斜面に広がる畑を多く目にしましたが、こちらはフラットな平地。
もともとは農作地ではなかった場所を開墾しています。

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必ずしも好条件とはいえない土地を切り開き、充実した葡萄の栽培を目指す。
そこに、いろいろな苦労があることは容易に想像できます。
しかし末田さんにとっては、やりがいのある挑戦でもあるようです。
畑を案内してもらいながら「次はこんなやり方を試したいと思ってるんです」
というお話をいくつもうかがいました。

「最初は醸造を担当してたんですが、そのうち畑のほうが面白くなってしまって」
末田さんの言葉の端々には、何か新しいことを生み出してやろうという
いきいきとした探究心と企みが感じられます。

育てている栽培品種も実にさまざま。試験品種も含めると、なんと40種類にのぼります。

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温暖な地に多い品種もあれば、いわゆるドイツ系品種もたくさんあります。
この豊かな経験はいずれは丹波ワインだけではなく、
日本ワイン全体の財産にもなっていくのかもしれません。

ワイナリー入口付近に植えられているのはタナやソーヴィニヨン・ブラン。
タナは秋雨に強いのではないかという理由で、試験を始めたというお話でした。
着色はカベルネ・ソーヴィニヨンより遅いけれど、成熟するのは逆に早いそうです。

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一方で古くから栽培されている品種も少なくありません。
ワイナリー創業とほぼ同時期に植えられたリースリングは、すでに樹齢30年。
ピノ・ノワールも20年に達するそう。
これだけ樹齢の高いピノは、全国でもそれほど多くはないはずです。

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下草についてもいろいろな可能性を模索中。
イネ科のソルゴーは水をとらせる目的で植えられています。

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また台木や苗木の栽培・研究にも余念がないとのこと。
末田さんの情熱は、まさにとどまるところを知りません。

自社の畑は約3ヘクタール。
かなりの広さですが、常駐の栽培スタッフは2名だけだそうです。

大阪ではどこへ行ってもイノシシの話題を聞きましたが、こちらの悩みの種はタヌキとアライグマ。
獣害の被害は日本中、どこでも共通で深刻なようです。
鳥よけ(?)のCDもぶらさがっていました。

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建物からしばらく歩いた場所の畑は、野球のグラウンドと隣り合っていました。
このときも高校生たちが練習中。
ホームランが出ると、全部、葡萄樹の中に飛び込んできそうです。
この球場では、現西武ライオンズの銀仁朗選手もよく練習していたとか。

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収穫時期は、8月下旬のソーヴィニヨン・ブランを皮切りに、
10月上旬のカベルネ・ソーヴィニヨンまで絶え間なく続きます。

収穫スタッフももちろん大変ですが、この時期は葡萄をバトンタッチされる醸造スタッフの側にも、
息のつけないような忙しさが待っています。
丹波ワインの場合、扱う葡萄は自社の畑のものだけではありません。
その何倍もの量を仕込まなければならないのです。

しかしそんな忙しさの中でもやはり、このワイナリーの現場では
何か面白いことをしてみようという実験精神を忘れることはないようです。

醸造家・内貴さんのワインは基本的にエレガントで優しい印象。

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ワインの個性はもちろん造り手の考え方や手法だけでなく
畑の風土や天候、生育環境など、さまざまな要因の上に成り立ちます。
また個人的にもワイン造りを性別で分けるのはあまり好きではありませんが、
やはりその味わいには女性らしい繊細さが感じられるような気がします。

ところでワインを表現する際に、よく「チャーミング」という形容をすることがありますが
これは捉えようによっては、いわゆる「フルボディ」の逆、つまり「軽い」というような意味にもなります。

もちろんも否定的な言葉では決してないのですが、
私があるワインを飲んで「チャーミングなワインですね」と感想を伝えたとき、
内貴さんは「やっぱりチャーミングって言われちゃうか」とボソリ。

そのつぶやきに、えてして「薄い・軽い」などといわれがちな日本ワインのイメージから
脱却するんだという、造り手としての矜持がちらりと見えたような気がしました。
(ちなみに個人的には「チャーミング」という言葉はホントに賞賛の意味で使ってます。
 もう若くもないので、凝縮感ではなく単に濃さだけを追求したようなワインは正直、キツイのです。)

醸造場にも新しい技術を取り入れた設備がたくさん。
「こんなものまで」という機器があったり、とても勉強になりました。
最新の技術を秘密めかしたりすることなく、オープンに公開するこのスタンスは
山梨県のシャトー酒折にお邪魔したときとよく似た印象。
どちらも伝統にとらわれることなく、真っ当で新しいワイン造りを目指すところが
共通しているのかもしれません。

そしてもちろん醸造手法の分野でも、新たな試みは行われています。
「これ、何だと思います?」と渡されたグラス。
タンクに入っていたワインですが、かなり面白い香りがします。
なんだろうと考えていたら、末田さんが「梅酒の香りがするんですよね」とポツリ。

そうだ、梅酒です!
…でも品種はなんだろう。知っている香りがするようなしないような。

結局、分からないでいる我々に内貴さんが答えを教えてくれました。
正解は、なんと甲州。でも正直なところ、種明かしされてもピンときません。
このユニークさの秘密は、通常は赤ワインで行うある醸造手法でした。

うーむ。なんとも斬新な発想です。丹波ワインスゴイぜ!

さらに「これも飲んでみて」と空けていただいたのが
赤のスパークリング。

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「日本のフリザンテを作ろうと思って」

その言葉の通り、葡萄はランブルスコ。
イタリアを代表する瓶内二次発酵・微発泡ワインのスタイルです。

これがウマい!
今まで飲んだ赤のスパークリングには、
ややキレ味に欠けるものが多い記憶があったのですが、
このワインは赤ワインのボディーと泡の爽快感を見事に両立させています。

これはぜひ食事とともに楽しみたいワイン。
バーベキューなんかに持っていったら、すぐに人気者になれそうです。



醸造所を見学したあとは、改めて試飲コーナーでテイスティングさせていただきました。

まず印象に残ったのはカベルネ・ソーヴィニヨンロゼ。

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まさしくチャーミングなイチゴやチェリーの香り。
酸は穏やかですが、カベルネらしい骨格があるため、単調さに陥ることはありません。
食中酒として、魚・肉、和・洋とさまざまな料理に合いそうです。

丹波カベルネソーヴィニヨン&メルロー2005年は
まず最初にカベルネの香り、そのあとにメルローの個性が現れます。

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二つの品種のバランスがとてもいい。
穏やかな主張のある酸と柔らかなタンニンがあり
もう少し時間が経てば、このふたつの要素が溶け合い、より成熟したワインになりそうです。
オレンジのような果実のニュアンスが非常に魅力的。

ピノ・ノワール2007年は鉄っぽさの中に、
胡椒のようなスパイス香と紅茶のような香りが隠れています。

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赤い果実を思わせるボリュームのある果実味としっかりした酸。
タンニンの強さがやや支配的で、全体的に若い印象。
もう少し寝かせると、素晴らしい味わいになりそうな
とてもスケールの大きなワインです。これは楽しみ。迷わず購入です。

試飲はできませんでしたが、今回はカベルネ・ソーヴィニヨンロゼの
スパークリングも購入。こちらもとても期待大です。


ところでワイナリー併設のレストラン「丹波ワインハウス」は、
仲村わいん工房の仲村さんも太鼓判を推す本格派。

食材の宝庫、丹波産の野菜や肉を中心としたフランス料理です。
残念ながら今回は行けませんでしたが、次回はぜひ食事も楽しみたいと思います。


帰る頃にはすでに外は真っ暗。お二人にはお忙しい中、長時間お付き合いいただき恐縮の限りです。
いろいろなお話をうかがえて、最高の経験ができました。

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本当にお世話になりました。ありがとうございます!

京都駅まで出た私とT氏は、周辺のデパートなどでお土産を購入。
いよいよ旅は終わりです。

今回のワイナリーめぐりは、普段とはちょっと違う非常に濃~い体験でした。
なんだかワイン観とか関西の印象とか、いろんなものが結構変わったような気がします。
同行したT氏にもお世話になりました。おじさん二人旅、本当に楽しかったです。

それにしても関西ワインのレベルの高さは衝撃的なほどです。
もし目にする機会があったら、ぜひ手にとってみてください。
「こりゃウマイ」と思う可能性大ですよ!
# by inwine | 2010-01-20 03:47 | ワイナリー訪問
消費者が決める!「ジャパン・ワイン・オブ・ザ・イヤー」Vol.2

前回、参加者皆さんのお陰で盛り上がった『消費者が決める!ジャパン・ワイン・オブ・ザ・イヤー』。
早くも第二回の開催です!

今回のテーマはコレ。

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甲州です! 

テーマは前回同様、「プロじゃない飲み手が集まって、イチバン美味しいワインを決めてしまおう!」
まったく堅苦しい場ではありませんので、
「いろんな甲州がいっぺんに飲めて楽しそう」ぐらいの感覚で参加してもらえるとウレシイです。

詳細はこちら ↓。

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消費者が決める!「ジャパン・ワイン・オブ・ザ・イヤー」Vol.2
~甲州 部門~


■開催日 :2010年2月11日(祝)
 □第一部・・・テイスティング審査16:00~
 □第二部・・・結果発表&懇親会18:00~
■会  場 :Marche de VinShu
      東京都中央区日本橋室町3-4-4 JPビルB1F
      03-6202-6600
      http://www.sake-dining.com/marche/
■参加費 :7,500円(ワイン・料理込、税・サ込)
■参加資格 :20歳以上の日本ワインを愛する人
■募集人数 :40名
■出品ワイン:実行委員会幹事4名によるノミネート約25種類

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エントリーはこちら ↓ から

http://www.makersdinner.com/archives/1212838.html

「order」ボタンをクリックしてください。

きっと楽しいイベントになると思うので、皆さまぜひぜひご参加ください!
よろしくお願いします~。


お陰さまで満席になりました! エントリーいただいた皆さま、ありがとうございました!!
# by inwine | 2010-01-14 19:29 | そのほか
大阪 『仲村わいん工房』

大阪のワイナリー、最後にうかがったのは仲村わいん工房。
以前は知る人ぞ知る、といった隠れ実力派ワイナリーでしたが
近頃は首都圏のワインショップや飲食店でも、かなり目にする機会が増えてきました。

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代表的な銘柄といえるのが「がんこおやじの手造りわいん」。

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毛筆風の縦書き文字だけが記されたエチケットは超個性的ですが
味わいもまた他では出会うことのできない、強烈なインパクトに満ちています。

初めて飲んだときからずっと気になっていたワイナリーでしたが
今回、初めてお邪魔することができました。

まず出迎えていただいたのは、若い中村達也さん。
社長の仲村現二さんと同じ名字ですが、漢字は違います。

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最初「ナカムラです」とご挨拶いただいたときに
思わず「息子さんですか?」と聞いてしまいましたが、血縁関係はナシ。
昨年、仲村社長のもとに弟子入りして、現在は畑を中心に作業していると説明してくれました。

ちなみに仲村さんがつけたニックネームは「社長」。ご本人は「会長」だそうです。
最初は仲村さんが社長で、中村さんを「会長」に据えるつもりだったようですが、
「会長だと仕事をしない気がして」晴れて社長就任となったとのこと。

文章にするとなんだかややこしいけれど、
アットホームな雰囲気が伝わる面白イイ話です。
お二人の関係は、いわゆる経営者と社員にはまったく見えません。
まさに生活をともにしながら、芸を受け継ぐ「弟子と師匠」。

「シャチョー、お茶いれて!」などと言われながら、
中村さんはアレコレと師匠の言いつけに走り回っていました。
私たちも滞在中、何から何までお世話になりっぱなし。
中村さん、ありがとうございました!

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さて到着して、まず見せていただいたのは醸造設備。

これはプレス機。変わった形だなと思っていたら、
なんと仲村夫人のお父さんによる自家製だそうです。

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「こんな感じのモノがほしいって頼んだら作ってくれた」そうですが
とてもハンドメイドとは思えない、堂々たる姿。

別のワイン醸造会社の人がこのプレス機を見て、
「うちでも作りたいから、設計図を貸してほしい」と頼んできたこともあるほど。
けれど、なんと図面はまったく引かずに完成させていたそうです。

仲村さんのお義父さんいわく「同じモノを作れと言われても二度とできない」。
つまり正真正銘、世界に一台だけということになります。スゴイ…。


仲村わいんのワイン造りは何から何まで独創的ですが
その象徴ともいえるのが、生ビールタンクでの熟成。

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一般的にワインは発酵後、木樽やステンレスタンクで寝かせたあとに瓶詰め。
さらに瓶熟成を経て出荷されるというパターンが多いのですが
この熟成工程を、生ビールサーバー用の小さなタンクで行っているわけです。
これは仲村さんが(現在も)酒屋さんで、たまたまタンクの調達が容易だったからこそ。

正直なところ、このやり方によってどんなことが起きるのか
詳しいことは素人の私には分かりません。
しかし、そこには何か通常の工程にはない効果があり、
また同時に、通常の工程では当たり前の作用が起きなかったりするはずです。

しかしそれでも臆することなく「せっかくビールのタンクがあるんだから使ってみよう」と、
未知の領域との境界線をヒョイと飛び越える身のこなしは
正直、カッコイイという以外にありません。

ちなみにビールタンクの利点としては、内部の壁にびっしりと滓が張り付いてくれるため
滓引きの手間が省けることだとか。

打栓機は一本一本瓶詰めする手動タイプがフル稼働。

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この手間も半端ではなく大変なはずです。

醸造に関しても、発見はたくさんありました。
発酵はすべて野生酵母によるもの。厳しい選果の後に、古いタンクを用い、低温で非常に長期間の発酵。SO2の使用は極力控える。
…ってコレ、ローヌやロワールの一部の自然派醸造家とかなり近いスタイルです。
おそらく仲村さんは、そんなことを意識されてはいないのでしょうが。

よく自然派ワインについて書かれた本などを読むと
ワイナリーを訪ね、教科書とは異なる醸造工程を目にした筆者が
驚きを綴っている文章を見ることがあります。
専門的なことは分かりませんが、なんだかその心情が分かったような気がしました。

決して近代的で、規模の大きな施設ではないかもしれないけれど
この醸造場には、決まりきった枠にはまり切らない、強烈な刺激があります。
ワイナリーめぐりの醍醐味をかみしめるような思いでした。

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醸造設備の次は、車で畑を案内していただくことに。
ワイナリー所有の畑は、周辺の4か所に点在しています。
とても歩いて回れる距離ではないので、車は必須。移動にも時間がかかります。

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多くは「山の中」といえる場所で、簡単にはたどりつけません。
畑近くの道は、車一台通るのがやっとのほどの狭い道。
舗装もされていず、車はガタガタと容赦なく揺れます。

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当然のことながら、重機などを入れることは不可能。
立って作業するのさえ困難そうな斜面にも、葡萄棚は広がっています。
ほんの少し見せてもらっただけでも、栽培の困難さは十分にうかがえました。
あの圧倒的な凝縮感のワインは、やはり簡単に生まれるものではないようです。


畑にもビールサーバーが!

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収穫を手伝ってくれた人と開く「収穫祭」のときに、飲むためのものだそうです。

畑はほとんどが棚仕立てで、垣根はカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロがわずかにある程度。

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先代の時代に植えられた樹は、歴史を感じさせるさすがの風格です。

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垣根畑はやはりイノシシの被害がひどいそうで、
最近も電流の流れる柵を周囲に設置したばかりだそうです。

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これはウワサのミツオレッド。仲村わいんの味の秘密といわれる葡萄です。

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畑を順番に案内していただいているうちに、雪がちらつき始めました。
今回の関西旅行はちょうど寒波到来と重なってしまったのですが
さすがに雪は初めて。山中の畑はかなりの寒さでした。

こちらは山の中とはうって変わって、周囲を水田に囲まれた平地の畑。葡萄は甲州です。

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狭いながらも国道が通り、近くには路線電車の線路もあります。
水はけや日照など、山の中と条件はまったく違いますが「なかなか面白い葡萄」がとれるそう。
ただし棚の高さが低いため、こちらの畑もやはり作業は楽ではないとのことでした。

これは雨水を貯めて利用するための貯水装置。

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さて、畑を案内していただいたあとは、いよいよ仲村さんとご対面。
実はこの日、われわれ一行は夕食のお招きを受けていました。
同行のT氏が受けたお誘いに、私も図々しく便乗させていただいた格好です。

まずは仲村さんとご挨拶。お礼を述べつつ、二人でおみやげに持ってきたワインを献上です。

この日の宴会には仲村さんのお友達、それに飛鳥ワインの仲村裕三社長も参加。
飛鳥ワインと仲村わいん、ワイナリーの場所も非常に近いのですが
実はこのお二人、お父さん同士がいとこという親戚同士。
年齢も同じということで、近年はとくに交流を深めているそうです。
この夜もいろいろな話題が飛び交っていました。
(ちなみにこの夜も、裕三社長から突然の野球大会への参加要請が!
 翌朝も早くから雪がちらついていましたが、仲村わいんのお二人は元気に参加されていました。タフです。)

ところで今回ご馳走していただいたのは…


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イノシシ鍋!

これがお世辞まったく抜きの絶品。
実はこの肉は、仲村さんの畑に現れたイノシシを猟友会の方が仕留めたもの。
一年間、冷凍してじっくり寝かせ、臭みをとった貴重品です。とにかく脂の旨さが最高でした。
そして自家製の生姜の利いた甘いつゆが、これまたプロ顔負けの美味しさ。
こうした「味」への感性もまた、仲村さんのワイン造りの秘密なのかもしれません。

この日はバックビンテージワインも飲ませていただいたのですが、これがまた凄い。
仲村さんは冗談まじりで「これを超えるワインができたら、もうやめる」と
おっしゃっていましたが、味わいはまさに衝撃的。
「日本のワインなんて云々」という人たちに、飲ませてみたい衝動にかられました。

究極の地産地消というか、鉄板ガチガチのマリアージュというか。
とにかく最高の贅沢を体験させていただきました。

鍋をつつきワインを飲みながら、話題はさまざまな分野に。

お父さんが突然、ワイン造りを始めて困惑した話や
関西のワイン造りの現状や、問題を打開するため、未来に向けてどうすべきかという話題。
醸造を始めたときの苦労。イノシシの被害に頭を抱えたこと…。

こうした話を気負いもなく飄々と語る仲村さんには、とてつもない人間的魅力に満ちています。
「畑は友だちに助けてもらってなんとかやってる」とおっしゃっていましたが
それも、ご本人の人柄あってこそのことなのでしょう。

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食事のあとはお宅に泊めていただいたのですが、
翌朝、ビールを飲みながら(!)こたつでまた少しお話を。

「最初はこれで勉強したんです」と見せていただいた醸造の教科書には
几帳面そうな文字で、いくつもの細かい数値が書き込みされていました。
試行錯誤をしていた初期には、かなりの苦労もあったようです。

斬新に見えるさまざまな新しい試みも
当然のことながら、しっかりした土台の上でなければ成り立つはずがありません。
そんな部分を垣間見せてもらったような気がします。


思いもかけないような歓待をしていただいたうえ
貴重な話をたくさん聞かせてもらうことができて、最高の体験でした。

次の目的地へ向かう電車の中で
「今度、仲村さんのワインを飲むときはいろいろ思い出すだろうな…」と
T氏としみじみ語り合いました。

仲村さん、本当にありがとうございました!
# by inwine | 2010-01-10 17:06 | ワイナリー訪問
大阪 『カタシモワイナリー』

大阪2日目の前半は、カタシモワイナリーにお邪魔しました。
当初は平日に時間を割いていただく予定だったのですが、
こちらの日程の事情で、休日のワイナリーツアーに便乗させてもらうことに。

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約束の朝10時少し前に、高井利洋社長を訪ねました。
案内していただいたのは、テイスティングルーム。

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以前は倉庫だったそうですが、訪問客を迎えるために
水回りの設備やカウンターバーを設置したそうです。

これは実際に使われていた醸造の道具。

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「少し前まで現役」という感じのバスケットプレスなどは
他のワイナリーでもよく展示されています。
しかし、ここまで歳月が生々しく伝わってくるものはあまり多くありません。
メルシャンの博物館を見学したときのことを思い出しました。

カタシモワイナリーの創業は大正元年。まもなく百年を迎える老舗中の老舗です。
高井社長は直系の三代目。
お会いしてすぐに、溢れるような若さとバイタリティが伝わってくる方でした。

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ご挨拶したあと、早速大阪の葡萄栽培とワイン醸造について少し質問。

「大阪のワイン醸造の歴史は、日本酒の技術を取り入れて生まれたもので
 山梨の醸造の歴史とは少し系統が違います。」

「酵母もマスカットベリーAの皮を使って独自に作りました。
 ボルドー液を最初に使ったのも、実は大阪。」

淀みなく語られる話は、どれも興味深い内容ばかり。

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中野喜平を祖とする大阪の甲州(堅下本ぶどう)の歴史は
漠然とした知識としては知っていたのですが、
今回、改めて詳しい話をうかがうことができました。

明治11年、堅下村(当時)の複数の篤農家が苗木生育の命を受けます。
中野喜平はその中で唯一、栽培に成功。
これを機に堅下では葡萄栽培が盛んになりました。

カタシモワイナリーの創業者、高井作次郎氏も明治初期に土地の開墾に着手。
大正元年に最初のワイン醸造を行いました。
これがカタシモワイナリーの出発点となっているわけです。

大阪でワイン作りが一気に広まったきっかけは、昭和9年の室戸台風でした。
もともと河内周辺は生食用のデラウエア栽培が非常に盛んでしたが
このときの台風被害は壊滅的なほどでした。
そこで農家の救済策として、ワイン醸造が特別に許可されたのです。

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以降、ワイン産業は順調に拡大。最盛期には大阪全体で119軒も醸造所があったそうですが
大正創業のカタシモワイナリーは、この黎明期の醸造所よりも、さらに古い歴史があることになります。

ちなみに梅酒で有名なチョーヤも、119軒のひとつ。
本社は羽曳野市にあり、創業当時はワイン造りが本業でした。

しかし現在、本格的に醸造を行っているのは5軒のみ。
地元大阪でさえ、かつてワイン産業が盛んだったことは知られていません。

こうした現状に高井社長は強い危機感を抱いています。
お会いしている間、表現は変わりながらも
繰り返し「大阪は一致団結して産地を守らなければ」という内容の言葉を聞きました。

今、山梨でも甲州葡萄の生産減少が大きな問題となっていますが
大阪が直面する問題はより根が深く、重大なようです。

実は今回の訪問で、私自身は予想以上に葡萄畑が多いことに驚いていました。
しかし、それはやはり知識のなさゆえのことだったようです。
「昔はこんなもんじゃなかった」と語る高井社長の言葉からは
独自の歴史を持つ葡萄産地の誇りが伝わってきました。

近年は特に、自社畑周辺でも耕作放棄地が増えてきたそうです。
高井社長は人手不足に苦しみながらも、そうした畑で葡萄を栽培。
土地の伝統を守ろうと懸命な努力を続けています。


さて、いよいよワイナリーツアーがスタートです。
参加者は我々を除いて10名。珍しいことだそうですが、今回は全員大阪の方でした。
しかも10人中、9人が女性。
東京から来たおじさん二人組は明らかに浮いています。

まずは「皆さんはどんなワインがお好き?」という質問からスタート。
思い思いのことを話す言葉を受けて、高井社長が絶妙な間で笑いをとり
雰囲気は次第にほぐれていきます。さすがは大阪。素晴らしいです。

簡単な説明のあと、すぐに畑へ出発。
「そや、メガホン持ってこ」と社長が手にしたのは拡声器。
ワイナリーへ向かう道すがら、話はまず町の歴史から始まりました。

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ワイナリー周辺は細い路地が続く、実に風情がある町並み。
畑は山の斜面に広がっているのですが、そこに至るまでは古い民家が建ち並んでいます。

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近々、この一帯は橋下府知事の「大阪ミュージアム構想」のもと
地面に石畳が敷き詰められる予定だとか。ますます良い雰囲気になりそうです。

「どうです。いい町でしょう?」
高井社長の張りのある声が拡声器を通して、響きわたります。
もはやワイナリー見学というより、リアル遠足。なんだか楽しくなってきました。

いよいよ畑のある山が見えてくると、参加者の中から
「え、アレ登るの?」というざわめきが。
無理もありません。まるでスキー場のような急勾配です。
しかも寒波が来ていたため、寒い!

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「はい、ここから登りますよー」という声とともに山登り開始。
出発前の「ヒールのある靴の人は、長靴に履き替えて」という言葉は
ただの脅しではありませんでした。
歩いていると、足の甲が斜めに曲がっているのをはっきりと意識します。
雨が降っていたら滑ってしまって、かなり危ないはず。

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それでも高井社長の歩く速度は、進めば進むほどアップしていきます。
最初は残った葡萄を食べて楽しんでいた参加者の方々ですが
だんだん遅れる人が目立ち始めました。
このワイナリーツアー、楽しさは満点ですが甘くはありません。

自社畑はほとんどが棚仕立て。中には樹齢80年にも達する甲州の樹もありました。

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垣根はレゲントやリースリングなどの一部だけです。
ちなみにリースリングは単一品種のワインとしてもリリース。
残った実を食べさせてもらいましたが、12月中旬でもまだ酸がしっかりと残っていました。

大阪には、なぜかリースリングを植えているワイナリーがたくさんあります。
単一品種で正式にリリースしているのは、今のところカタシモだけ。
しかし今回、回った4社は例外なく栽培しており、しかも皆、ある程度の手ごたえを得ているようです。

大阪は気温が高いというイメージがあったので
ドイツ系品種のリースリングはあまり結びつかず、意外だったのですが
もしかしたら秘密はこの斜面にあるのかもしれないと思ったりもしました。

畑を回りながら、続いての講義は「紫ぶどう」について。
これは中野喜平による堅下本ぶどうの導入以前に育てられていた品種で
数百年の歴史があるといわれています。
実はこの品種も、現在の甲州とDNAが一致することが、近年の研究で分かったとのこと。

ここは大阪の有名フレンチ「カハラ」(ミシュラン2つ星だそうです)の専用区画。

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上から見下ろすとこんな感じ。ワイナリーがはるか遠くに見えます。

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まだまだ上へ行く予定だったようですが、予想外に遅れる人が多くなり、残念ながら「途中下山」。

帰り道では、民家の庭にある棚も見せていただきました。

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昔はどの家にも、こんな風に葡萄棚があったそうです。

神社や由緒ある井戸にも寄って、ワイナリーへ。醸造施設や貯蔵室を見せてもらいました。

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木製のピュピトルも。

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驚いたのはブランデーの蒸留器。なんと高井社長の手作りだそうです。

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最後はスタート地点のテイスティングルームに戻り、皆さんお待ちかねの試飲。

「辛口を」「甘いの」「白」「赤がいい」といろんな声が上がります。
「お客さんたち、怖いわ」「もう赤字でっせ」とこぼしながら、高井社長が次々とワインを空けていきます。

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『カベルネ・ベリーA 2007』はトップノーズのハーブっぽい香りが印象的。
どこかエキゾチックで東洋的な芳香です。
カベルネがきれいに熟していて、青臭さはほとんど感じられません。

『メルロ&マスカットベリーA 2009』ははじめに土っぽいメルロらしい香り。
温度が上がってくると、ベリーAのキャンディー香が強く立ってきます。

いずれも自社畑と買い葡萄のブレンドですが、バランスが良く
2000円前後とは思えない洗練されたワインです。

『合名山 堅下甲州葡萄 2009』はクラシックな甲州のスタイルを思わせながら
柔らかく、広がりのある味わいが実に魅力的です。
『軽さ』とも『エレガント』とも少し違う、なんともいえない柔らかさ。
この独特の個性は品種を問わず、
今回の旅でお邪魔したワイナリーすべてで、なんとなく感じた気がします。

こじつけに過ぎないのは分かっているのですが、この柔らかさは一見キツそうに思えて
実はあたりの柔和な関西弁と、どこか共通するように思えてなりません。

最後に「コレも」と空けてくれたのが、瓶熟成中の「合名山 シャルドネ 2009」。

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最初はまだ還元的ですが、空気に触れさせるうちに品種香、柔らかい果実香が立ち上ってきました。
酸、アミノ酸的な旨み、果実味など今の段階ではまだバラバラですが
どの要素もひとつだけが突出していることはなく、バランスのよい構成が感じられます。
余韻は今の段階でもかなり長め。熟成を経れば、きっと素晴らしいワインになりそうです。

カタシモワイナリーに感じるのは、老舗らしい安定感。
あまり高価格帯のワインでなくとも、きっと美味しいのではと思わせてくれます。

では高価格帯のワインは?
それを確かめようと思って、今回は5000円超の自社畑メルロも買ってみました。

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意外にも(?)アメリカンオーク熟成だそう。どんな味なんでしょうか。
飲むのが楽しみですが、いつ空けていいのやら。
ちなみにワイナリーから少し離れた売店は、この看板が目印。いい味出してます。

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進取の気性。負けん気。ユーモア。プライド。そしてせっかちさ。
高井社長は大阪人のイメージすべてを体現しているかのような、とても魅力的な方でした。
これからカタシモワインを飲むときには、必ず社長の顔が頭に浮かぶはず。
これこそが日本ワインならではの特権です。

次は仲村わいんにうかがうんです、とお話したら、その場で仲村社長に電話してくれました。
「あんた、この人たちに剪定でも手伝わせる気やろ? もう準備してる? やっぱりな!」と爆裂トーク。
最後まで笑いがいっぱいでした。

長い時間お世話になり、本当にありがとうございました。楽しかった!
# by inwine | 2009-12-31 02:12 | ワイナリー訪問
大阪 『飛鳥ワイン』

ひめひこワイナリーの次は飛鳥ワインへ。
最寄りの駅は近鉄南大阪線の上ノ太子です。

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この駅、思っていたよりもかなりのどかな感じ。
駅周辺で何か食べようと思っていたのですが、飲食店はまったく見当たりません。
駅前にポツンとある乾物屋さんのような店で尋ねてみても
笑顔で「あらへん」と即答が返ってきました。

ヤバイです。ホテルで朝食を食べたとはいえ、これからまだ長丁場。
ずっと冷たい強風が吹き荒れてるし、昼食抜きはかなりキツそうです。
「どうしようか…」と同行のT氏と顔を見合わせました。

結局、この乾物屋さんでカップラーメンを購入。
お湯を分けてもらって、店前のベンチでずるずると食べることにしました。
寒空の下で食べるラーメンはちょっとわびしいけど、これはこれで楽しい。

ワイナリーは、市街からやや外れたところに位置するケースがよくあります。
本当は大きな町などで小休止しつつ移動すればいいのですが
ある程度、効率重視で回らないとあちこちに行けません。

だからどうしても、昼食などは後回しになりがち。
当然のことながら、ほとんど土地勘もありませんから、
行ってみたら何もなかった、という事態も時にはやむを得ないのです。

九州に行ったときは、昼食がとんがりコーン一箱だったこともありました。
でも、そんなことも逆にいい思い出になったりするものです。



さて少しお腹が落ち着いたとこで、いよいよ飛鳥ワインへ。

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事務所で仲村社長が出迎えてくれました。
とても温和でまじめそうな方です。

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少しご挨拶をした後、すぐに畑を案内していただくことに。

駅からワイナリーまでは上り坂を歩いて数分。
そこからさらに上がっていくと、すぐに葡萄畑が広がり始めます。

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ここ羽曳野市は、昭和初期には柏原市と並んで葡萄の一大産地でした。
当時、大阪は全国で一位を争うほどの生産量を誇っていたそうです。
関東の人間にとっては、大阪のような大都市と葡萄は
あまり結びつかないような気がしますが、
実はワイン造りも非常に古くから行われているのです。

ワイナリーの畑へ向かう間にも、農家さんの棚畑が道の両脇に並んでいました。

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自社畑は山の斜面に広がっています。
作業の効率化を図るため、こんな風にブロックを入れて階段状に。

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ほとんどが垣根仕立て。新しく開墾したところも多く、樹齢は場所によってさまざまです。

丹念に手を入れていることが一目瞭然な、きれいな畑です。

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減農薬、低化学肥料にも取り組んでおり、
昨年、自社畑のデラウェアを使ったワインが
農産物加工品として初めて、大阪府の「大阪エコ農産物」認証を受けたそうです。
後でこの銘柄も試飲させていただきましたが
きれいな酸が印象的なとても美味しいワインで、個人的にも購入させてもらいました。

除草剤は使わずに、いわゆる草生栽培にも本格的に取り組んでいます。
従来の考え方にとらわれない、新しいアイデアを取り入れることもしばしば。
今回、お邪魔した他のワイナリーでも感じたのですが
大阪の人の進取の気性、チャレンジ精神、新しいモノ好きの気風はとても刺激的です。
飛鳥ワインも非常に伝統のある会社ですが、古めかしい雰囲気はまったくありません。

そういえば事務所にお伺いしたときに
大きなディスプレイの新しいMacがあることに気づきました。
実はこの使い手は仲村社長。

後でお話をうかがうと、IllustratorやPhotoshopを
バリバリ使いこなしていると教えてくれました。
一部のワインのエチケットも、デザインから手がけているそうです。
うーん。社長、カッコいいです!

現在は甲州の垣根仕立てにも挑戦中。
先日も仲村わいんの仲村現二社長と共に、グレイスの明野農場に視察にいったばかりです。

しかし、新しい挑戦にはリスクもつきもの。ときには予想していなかったことも起きます。

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これは下草として、芝を植えた畑。
狙いはカバープラントの効果でしたが、
この芝の種類は、これまで葡萄畑ではあまり使われた例がありませんでした。

最初は順調に見えたのですが、そのうち芝の勢いが強くなりすぎて
肝心の葡萄の生育状態が悪くなってしまったそうです。

「下草と葡萄を競争させれば、根がしっかり張る」なんて話をよく聞きますが
実際はそんなに簡単な話ではないのかもしれません。


現在、最も収量が安定していて、同時に高い品質を実現しているのはシャルドネ。
自社畑では他にカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなどを中心に栽培していて
特別銘柄として販売もされています。

一方で将来を見据えた、新しい品種の栽培も積極的に進めています。
また栽培・醸造を担当する若いスタッフ、福井さんも急成長中。

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歴史あるワイナリーは未来への備えも万全のようです。

ワイナリーに戻り、試飲をさせていただきました。

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『シャルドネ 2005』の色合いは淡く、きれいに澄んだゴールド。
シャルドネらしい品種香と柑橘香が立ち上ります。
味わいもレモンのような爽やかな酸味に、ハーブのような清涼感も。
後口の心地よい自然な苦味もイイ感じです。

重量感のあるタイプではありませんが、
葡萄の凝縮感があり、薄っぺらさは感じさせません。
魚介のオーブン焼きなどと一緒に飲めば、あっという間に空いてしまいそうです。

『カベルネ・ソーヴィニヨン 2005』はMLF由来かと思われる甘い香りのあと
カベルネのストレートで柔らかな果実味が現れます。
樽のニュアンスはそれほど強くはありません。
果実味を覆い隠すことなく、いい塩梅で彩りを添えている感じ。
個人的にはとても好きなタイプです。

こちらもシャルドネと同様、品種の個性がはっきりと出ていて
余計な小細工をしない、造り手の姿勢が伝わってくるワインです。
やはりグラマラスなカベルネを求める人には不向きかもしれませんが
バランスよく、チャーミングなワインを求めている人にはオススメです。

さらに「アレも持って来い」と社長が出してくれたのが
ソーヴィニヨン・ブランとリースリング。
まだ試験醸造の段階で、エチケットもありません。
いずれも2006年と2007年のヴィンテージ違いです。

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これがまた実に素晴らしいワインでした。

ソーヴィニヨン・ブランの06は柑橘系というよりも、
リンゴの蜜の部分のような独特の酸味と甘味があり、
柔らかく、豊かな広がりが魅力的です。
粘度も感じられ、みずみずしい果実をダイレクトに感じることができます。

一方、リースリングの07はアールグレイのような華やかな芳香があり
優しい果実味を、芯の通った酸が引き締めています。
バランスがよく、食中酒として楽しんでも最高なはずです。

この2本はカベルネやシャルドネとは対照的に
品種の個性よりもワインそのもののユニークさがとても魅力的。

親しみやすく、スイスイと喉を通ってしまいますが、余韻もしっかり。
飲み込んだあとも、果実感がふんわりと口の中に残ります。
お言葉に甘えて、いずれも2杯、3杯といただいてしまいました。

面白いのは、どちらの品種もヴィンテージによって個性がまったく違うこと。
香りも味も同じ品種とは思えないほどですが、
年が違っても、造りはほとんど変えていないそうです。
はたして、この個性の違いを生んだ秘密は?? なんとも興味深いワインです。

これからいよいよリリースに向けて、本格的な醸造に入る計画とのこと。
そのとき味わえるワインは、また違った個性を持っているのかもしれません。
今からリリースが待ち遠しくなりました。
仲村社長、貴重なお時間と貴重なワインを本当にありがとうございました!
# by inwine | 2009-12-28 10:55 | ワイナリー訪問