人気ブログランキング | 話題のタグを見る
新潟 『カーブドッチ』
新潟県のワイナリー、カーブドッチに行ってきました。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_12485414.jpg


案内をしていただいたのは、ワイナリー立ち上げの一員である常務の今井卓さん。
畑を目の前に、地勢の話からスタートです。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_12105735.jpg


実はこのワイナリー、海まで約800メートルの距離。
日によっては波の音が聞こえてくるという立地です。

そのため土壌はこんな風に完全な砂地で、まるで海岸のようです。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_1211399.jpg

落とした後も、ほとんど手に残らないほどサラサラでした。

長梢に仕立てられたシャルドネ畑の中で
仕立て、剪定、誘引、芽かき、
樹勢のコントロールや樹間の設定などの細かい話から
新潟の風土や食文化というマクロな内容まで、話題は多岐に渡ります。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_12502369.jpg

今井さんによれば、このあたりはかなり温暖な気候。
歩いていけるほど近くで雪が積もっていても
畑にはまったく降らないということも多いそうです。

ワイナリー建設にあたりこの地が選ばれたのも、
なんらかの地縁というより、土地の特性がワイン造りに向いているという
実利的な判断の結果だったそうです。

醸造所としての特徴はまず扱っている品種の多さ。
ツヴァイゲルトレーベをはじめとするドイツ系。
カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネなどフランス系。
あるいはイタリア系のサンジョヴェーゼまで。驚くほどのバリエーションです。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_12145783.jpg


ドイツ系品種が多いのは、実は北海道ワインとの関係から。
カーブドッチの落社長は北海道ワイン・嶌村社長と血縁関係で
ワイナリー造りの基礎を北海道で学んでいた時期もあるそうです。

今回、さまざまな話をお聞きする中で、
最も感銘を受けたのが果敢なチャレンジ精神でした。
栽培・醸造合わせて社員は6名という少数精鋭ですが
どの分野においても、さまざまなレベルで新たな試みが続けられています。

そのため品種によっては、年ごとに造りががらりと変わり
まったく異なるスタイルのワインが生まれることも。

またある時期には、天然酵母での発酵にも挑戦。
やはり試行錯誤があったようですが、
その成果は現在のワイン造りにも生かされています。

現在は醸造・栽培両方の統括的な立場にいるため、
なかなか時間がとれないという今井さんですが
少し前までは畑にも積極的に出ていたそうです。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_12165421.jpg


このあたりのような完全な砂地では、メルロの栽培はなかなか難しいようですが
今井さんはみずからが独りで世話をする区画を持ち、
独りで笠かけをするなどして、立派な葡萄を育て上げたりもしたそうです。
また、やはり小区画限定で無農薬栽培に挑み、驚くような成果を得たことも。

「わずかな日陰があって、日の出直後の朝日が当たらないだけで
 葡萄の生育はがらりと変わってしまうんです。」
実例を交えた今井さんの話には、説得力に満ちていてとても刺激的でした。

こうした挑戦の精神は、実は創業時から脈々と受け継がれてきたものです。
新興ワイナリーが葡萄栽培から手がけるという例は、
当時はほとんど例がありませんでした。
同業の全員が無謀だといって反対したそうです。

しかしあえて自社葡萄にこだわったワイン造りを決意。
新しいワイナリーリゾートのモデルを作り上げることで
見事に成功を収めました。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_12184612.jpg


今井さんたちの試みには、ときに大胆すぎることもありましたが
その分、大きな発見も少なくなかったようです。

しかしそれでも「まだまだ分からないことだらけ」と今井さん。
「すべてが偶然かもしれないですからね」という言葉からは
自然への畏敬の念が伝わってきました。

多くの可能性を追い求める一方で、
「ワインは余計なことをしすぎず、自然な造りがいいんだと気づきました」とも。

以前、下草としてマメ科の植物を植えたのですが、
「この場所の生態系にないものを取り入れるのは、やっぱり不自然」と
考え直したこともあったそうです。

試飲をお願いしているときには、こんな話も。
「お客さまにはよく『ワイン造りは流木を削って、彫像を造るようなものだ』という話をするんです。
 荒っぽく削って、ワイルドな味を出している像もあれば、
 しっかり削りこんで、写実的でリアルな像もある。
 ワインもそれと同じ。もちろん巧拙もあるけれど、いろんなやり方があるのがワインなんです。」
 
今井さんには結局、4時間以上もお話をうかがうことができました。
お忙しい中、お付き合いいただき、ありがとうございました!


夜はワイナリー併設のレストランで、フレンチの夕食。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_1254667.jpg


メニューにはなかったのですが、
幸運にも「ピノ・ノワール Private Reserve 2006」をお願いすることができました。

新潟 『カーブドッチ』_c0140044_12193089.jpg


果実のコンフィチュール、バラ、シナモン系のスパイス。
味わいは黒系果実、植物的なニュアンスも。
肉付きのよさをしっかりした酸が支えていますが、
やや堅く閉じている印象もあります。

抜栓30分後、奥のほうにあった果実味が少しずつ開いてきました。
日本のピノ・ノワールには珍しいボリューム感があり、
モダンなスタイルを感じさせるワインです。
重厚なポテンシャルがはっきりと伝わってきて、
あと数年熟成させたら、さらにいい感じになりそう。
でも、その頃にまた会うことはできるんでしょうか?

ワイナリーの敷地内にはスパや岩盤浴などを備えた温泉宿泊施設や、
天然酵母のパン(絶品!)、ジェラート、
地ビールと自家製ソーセージなどの美味しい店も充実。
大人が楽しめるリゾートです。
ちなみに、周辺にはびっくりするぐらい人懐こいネコがたくさんいます。

今回は宿泊もしたのですが、部屋も広く、清潔で
とても快適な旅を楽しむことができました。
小さなワイナリーめぐりも楽しいけれど、こんな旅行ももちろん最高。
温泉とワインと美味しいものが好きな方はぜひ!
by inwine | 2009-12-05 13:10 | ワイナリー訪問
<< 新潟 「フェルミエ」 シャトー・メルシャン 『甲州小... >>