横浜・軍鶏郭茶寮で行われた「アルプスワイン前島良氏と独創軍鶏料理の夕べ」に行ってきました。 この会のテーマは「アサンブラージュの達人」。 ワインには1種類の葡萄のみで作る場合と、複数の品種をブレンドして作る場合があります。 ざっくりいうと前者の代表がブルゴーニュの赤ワイン、後者の代表がボルドーの赤ワインです。 アルプスワインの前島さんは、このブレンド=アサンブラージュのワザがキラリと光る名ヴィニュロンなわけです。 こんなにお茶目ですが。 当日は細長いお座敷に大勢のお客さんが大集合。ワイワイガヤガヤと楽しい会になりました。 出されたワインはコチラ。 AWプラチナコレクション・シャルドネ 2008 JAPANESE STYLE WINE甲州 2007 ASSEMBLAGE Type R ロゼ 2008 AWプラチナコレクション・シラー 2008 AWプラチナコレクション・マスカットベリーA 2006 アリカント 2007 2008年のシャルドネは樽を使わず、MLFも行わないという個性派。 まさにどスッピンなシャルドネです。 海外の多くのワインと違い、日本のシャルドネは化粧気があまりないタイプがよくあります。 実際どれもアリだと思うんですが、ここまで潔く素顔丸出しなのは珍しい。 当然のことながら、もとの顔に自信がなければこんな芸当はできません。 しかも除梗はいっさいせず、搾汁は強めだそう。プレスラン(搾った果汁)はかなり茶色だというお話でした。 こんな話だけを聞くと正直かなり荒っぽい、雑味の多い出来上がりのような気がしてきます。 しかし実際のワインはあら不思議。実にみずみずしい爽やかな味わいです。 ほかのシャルドネでは樽の香りの陰に隠れがちな、品種そのものの個性がハッキリ浮かぶ。 『シャルドネってこういう葡萄なのかー』と改めて知った気がしました。 甲州も品種の個性がはっきりと出ている直球なワイン。美味しいです。 柑橘系、土っぽさ、酸、苦味。さまざまな要素が、どれも甲州そのものを感じさせます。 前島さんの「苦味を残すのが仕事だと思うんですよ」という言葉は、とても印象的でした。 ロゼは今回、特別出品という形だったのですが、個人的に非常に注目なワイン。 使われている葡萄はマスカットベリーA、メルロ、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン。 それが『達人の技』でブレンドされています。 香りはベリーAのイチゴ香。でもその後ろにシラーの柔らかなスパイス、 味わいの第一印象はカベルネ。でも飲み込むと後口にメルロも感じられる…と コレはまさに『味の弦楽四重奏やぁー。』 そしてなにしろ甘さや酸のバランスが絶妙。なのでストレスなく、するするといつまでも飲めてしまいます。 口に含んだとたん、『おおおー!!』と森や宇宙が頭に浮かんでくる…、とかそういうアレではなく、 いつのまにかどんどん飲んじゃって、気がつくと『えっ? もうないの!』とビックリするような感じ。 これぞ究極のデイリーワインかも。 そしてシラー。日本でもこの品種はいくつかのワイナリーで作られていますが、 アルプスのシラーも日本を代表するワインといえます。 オーストラリアのいわゆる『シラーズ』とは趣のまったく異なるエレガントなタッチ。 本家(?)の北部ローヌのスタイルを感じさせます。 原料となる葡萄の樹齢は10年以上だそう。柔らかな果実味と洗練されたスパイスの風味が魅力的です。 本家のフランスでシラーに合わせる定番料理は鹿やウサギなどのジビエですが、 こちらは砂肝の串焼きなんかと合わせたくなる繊細な味わいでした。 ワインの一応のメインはマスカットベリーA。 自社管理のベリーA、そしてカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンドです。(カベルネの比率は15%) グラスに鼻を近づけると、まず感じるのはカベルネの香り、 そして口に含むとベリーAの良さであるチャーミングな果実味が、とてもよく引き出されているのが分かります。 海外のワインを好きな方の中には、ベリーAが苦手という人がよくいます。 原因はたぶん、トップノーズに現れるやや泥臭い香りでしょう。 ワタシ自身はあまり嫌いじゃないんですが、 そのことを指摘したくなる気持ちは分かるような気がします。 実はアルプスのベリーAを飲んで、まず頭に浮かんだのはそういう人たちでした。 このワインなら抵抗なく飲んでもらえそう。 カベルネとベリーAのそれぞれの良さが引き出されていて、ストレートに楽しむことができます。 ベリーA単体のワイン、カベルネ単体のワインにはない新しい個性。 こういうワインを飲むと「アサンブラージュ」とは要するに「設計」なんだな、ということを感じます。 こういう味わいのワインを造りたい。そのためにはどういうデザインをすべきで、どういう技術が必要なのか。 それは建物や構造物を生み出すための設計のメカニズムとよく似ている気がします。 ワインメーカーの方々は農民だったり、化学者だったりといろんな顔を持っていますが、 実は優れた設計家でもなければならないのかもしれません。 『一応のメイン』と書きましたが、最後に出てきたのは『アリカント』。 こちらはいわば「ボーナストラック」でしょうか。 一般的にはあまりなじみのない品種ですが、特徴はまず色の濃さ。 歯が黒く染まってしまいそうな気がするほどです。 通常は色づけ用のブレンド品種として使われることが多いとのこと。 黒い皮の果物を思わせる、親しみやすい果実味。そしてしっかりしたボディ。 ワイルドな土っぽさも魅力的で、スペインバルでがぶ飲みしたいような楽しいワインです。 こちらも他にはあまり見られない、とびきりの個性を持った1本でした。 ところでワインもさることながら、料理もバツグンでした。 「マリアージュ」って最近良く聞く言葉ですが、 現実には相性にこだわっているワイン会ってほとんどありません。 実は今回の会は、少しだけ裏方として開催に関わらせてもらったのですが 料理の試食会に参加したときは「ええー、そこまで考えるの?」とびっくりしました。 もちろん実際に料理とワインの相性はバッチリ。 あんまりお世辞をいう気はありませんが、こういう風に食事を楽しめるのは かなりぜいたくな気がします。 ワイン会は定期的にやっているようなので、食事とワインの相性に興味のある方は こちら↓をチェックしてみては? http://www.makersdinner.com/ ちなみに今回の会のシェフ、塩月さんも最後にご挨拶に登場。ごちそうさまでした!
by inwine
| 2009-04-02 14:23
| 日本ワインを飲める店
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