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池川仁さんの畑

ワイン仲間の方にお誘いをいただき、念願の池川仁さんの畑を見せていただきました。
池川さんはシャトー酒折の「キュヴェ・イケガワ」でも知られる、革新的な葡萄栽培家です。

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「環境のまったく違うヨーロッパの栽培の教科書を、
 そのまま日本に持ち込んでもうまくいくわけがない。」

「カリスマ」という言葉を感じずにはいられない、池川さんの言葉には
圧倒的な迫力と説得力があります。
その考え方の根本は日本の土地で長く培った葡萄栽培のノウハウを、
ワイン用葡萄にも生かすというもの。

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土壌や気候、病害、そして葡萄そのものと実際に向き合ってきた
池川さんだからこそのアプローチですが、
同時にまったく自然で真っ当な向き合い方だともいえます。
ワインをめぐってしばしば乱発される「テロワール」という言葉が、
本来どういう意味なのかを考えさせられました。

「匂いをかいでみて」と言われて手に取った畑の土は、他の畑とはまったく違う懐かしい匂い。
少し口にも入れてみましたが、他所の土は強烈なエグ味があるのに対して、
池川さんの畑は、やはり遠い記憶の土の味そのものでした。
土壌の違いというものを、文字通り味わえた気がします。

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「生食用葡萄に比べれば、ワイン用葡萄のほうが楽」という言葉には、
長い経験に基づく確固たる自信が伝わってきますが、
池川さんの凄いところは決して旧来の栽培方法に拘ってはいないところ。

というより過去の常識にはまったく流されることなく、
きわめて独創的な手法で成功を収めています。
その根底にあるのは、何よりも
「人間は葡萄の生育をコントロールするのではなく、ただ手を貸すだけだ」
という考え方です。

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そしてさらに特筆すべきなのは、
こうした新しい手法をすべて理論体系化しているところ。
決して『感性』だけの産物ではありません。

たとえば葡萄の樹の仕立て方や接木の手法ひとつとっても
従来との違いやその意味を、植物生理学の観点から詳細に説明していただけました。

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「当たり前」の出発点、大胆な発想、理論的な裏づけ、確かな目標、そして成功。

「私は畑でワインを作っているんです」と語る池川さん。
従来の日本の葡萄農家には、ほとんどなかった発想のはずです。

池川さんと強力タッグを組むワイナリー、シャトー酒折の井島さんも
やはり実に説得力のある、そしてきわめて現実的なポリシーを持つ方です。

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醸造設備を見せていただくとき、井島さんがいつも誇らしげに言うのが
「機械の分解と洗浄がうちの最大の仕事です」という言葉。

清潔な環境を常に維持して雑菌を徹底的に排除、
葡萄のポテンシャルだけを純粋に引き出すというやり方は、
池川さんの葡萄にはまさにぴったりのような気がします。

「ヨーロッパではワイナリーが栽培も行うのが一般的だけれど、
 日本では餅は餅屋。葡萄農家の方に任せるのがいいと思う。」
という言葉にも、なるほどと頷かされます。

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井島さんは新しい技術の導入に関しても、あいまいな点は一切ありません。
「必要と判断すれば、必要なモノを使う」というのがポリシー。
私個人の考えですが、これこそがものづくりのうえで
一番安全で、信用できるルールのような気がします。


最後に池川さん、井島さんと試飲させていただいた際、
天然酵母での発酵について意見を聞いてみました。
クリーンで現実的なワイン造りをされるお二人には、一見真逆のアプローチにも思えますが
だからこそ尋ねてみたくなったのです。

意外にも井島さんは「実は興味がある」と教えてくれました。
「池川さんの葡萄を、その葡萄自身の酵母で自然に発酵させてみたい気もするんです。」

「葡萄の成長に手を貸すだけ」という池川さん。
「葡萄の力を引き出すだけ」という井島さん。

その言葉は、まったく遠くに位置するようにも思える、
いわゆる「自然派ワイン」の主張とも、どこか重なって見える気もしました。


現在、お二人はさまざまな海外用品種も栽培・醸造中とのこと。
そのボトルが世に出たとき、日本ワインの未来はまたひとつ開けるはずです。

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(K・Nさん、写真提供感謝です!)
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by inwine | 2009-05-29 22:22 | ワイナリー訪問