カテゴリ:ワイナリー訪問( 58 )
九州の旅<5> 都濃ワイン
まだまだ続く九州の旅。次は宮崎・都濃ワインを訪ねました。

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3月の日本橋・Marche de Vinshuでお会いした小畑さんにご連絡したところ、
あいにく訪問日には出張でいらっしゃらないとのこと。
「代わりに赤尾という者を訪ねてください」とのお言葉をいただきました。

この日も朝からシトシトと雨でした。
でもワイナリーに着き、しばらくするとすっかりいい天気に。
そしてちょうど帰る頃になって、また少し降り出しました。
まるでこちらの訪問に合わせて晴れてくれたようです。

実は前日の熊本ワインでも、
偶然がいくつも重なったようなラッキーな出来事がありました。
日ごろの行いが良いとやっぱり報われるんだな、としみじみ実感した次第です。
サンキュー神様! 帰りの飛行機も安全運転でよろしく頼むぜ。


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赤尾さんは34歳。
地元の農業高校出身で、18歳から葡萄作りにかかわってきたそうです。
現在は小畑さんの右腕として、栽培・醸造の両方に携わっています。

ごあいさつを交わし、すぐに醸造設備の見学へ。
清潔な室内には近代的な機器の数々がずらりと並びます。
中には日本でここにしかないという設備も。

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しかし何よりもガツーンとショックを受けたのは、赤尾さんのお話でした。

「ワイン造りはもちろん大事なことだけれど、
 それだけを追い求めるのは、なにか小さい気がする。」

赤尾さんが理想とするのは、自らが根付く地域の再生。
それは単純な町おこしや活性化ではなく、
本来、社会がそうであるべき機能的で健全な姿を
取り戻すことを意味しています。

人、風土、地元。
それらをすべて含んだものこそが、
本当のテロワールなのだと赤尾さんは言います。

目の前の利潤追求や、硬直した因習に縛られることなく
生産者、流通者、消費者のすべてが
胸を張って気持ちよく「当事者」となれるものづくり。

「醸造家は畑へ行ったほうが良いし、農家はワインを知ったほうが良い。
 自分は18から葡萄作りにかかわってきた強みがある。
 これからも農家の人たちと積極的にかかわりながら
 枠にとらわれないワイン造りをしていきたい。
 みんなのワイン、みんなで作るワインを目指したいんです。」

赤尾さんの高く、大きな志は当然のことながら
農業の姿勢そのものにも明確に現れています。

ワイナリーの建物を出てまず向かったのは
葡萄ではなく、くぬぎの木。赤尾さんが土を掘り起こします。

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表面を覆う土は落ちた葉が有機的に分解されてできたもの。
当然その下にあるのもより古い時期に、同じ過程を経てできた土です。

やがて現れたのは土中の浅い位置にある毛細根。栄養分を吸う根です。
この部分の土は香りがしっかり。なめてみると味も濃厚でした。
しかし、さらに少し掘ると根は太くなっていきます。
この部分の土はにおいがやや弱め。
つまり、有機質が少なく栄養分が少ないわけです。

これがまず講義の第一章。これを元に次はズッキーニの畑へ。
収穫間近というズッキーニを手に取り、ぽきりと二つに折ります。
するとねっとりとしたみずみずしい露が、びっくりするほど滴ります。
折った後に再び合わせると、ぴたりとくっついてしまうほど。
(ゆでて食べるとトウモロコシのような味がするそうです)

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「これを収穫しないで放っておくと、どうなると思います?」と赤尾さん。
「中がスカスカに?」
「そう。それで実が大きくなっていくんですよ。」

中の種が周囲の栄養分を吸い取ってしまい、
その結果、細胞が壊れて膨張してしまうんだそうです。
うーむ、なるほど。

これが第二章。
ここまでの予習を終えて、葡萄畑へ向かいました。

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赤尾さんが実践するのは、従来の栽培の常識とはまったく異なる手法です。

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ヨーロッパの銘醸地を例に、こんな風に説明してくれました。
「向こうの土地は、潮が満ちてきたときに
 畑の土を少し掘ると、 水が染み出してくるといいます。
 たとえ高い丘の上でもそう。
 ヨーロッパの葡萄畑にはそういう地勢的な条件がある。
 でもここの畑の土地にはそんな水の流れはありません。
 だから単純に水を与えない、というやり方ではダメなんです。」

実際に水をよく吸わせた土地とそうでない土地を
比較できる場所があったのですが、明らかに様子が違います。

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また葉が大きくなりすぎると、
肥料のやりすぎをまず考えるという話をよく聞きます。
しかし赤尾さんにとってはまったく逆。
それは栄養が足りない結果なのだといいます。
これはさきほどのズッキーニと同じ理屈。

栄養をきちんと得ることで、葡萄は健康に育つ。
だからこそ病気も少なくなり、農薬を使わずに育てることが可能になるそうです。

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水や肥料を与えず、厳しい環境を作るというのが葡萄作り、
という漠然としたイメージを持っていた私にとっては
まさに目からウロコの体験でした。

シャルドネ、ピノ・ノワール、シラー、テンプラニーリョ。
どの畑にもそれぞれの成功と問題点、新しい疑問と解けた答え、
試みと回帰があります。

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そのすべてと付き合うためには、ひとつの葡萄をじっくりと見つめ続ける
「定点観測」しかないと赤尾さんは言います。

特に印象的だったのは下草の話。
「雑草という名の植物はないんです」と、ひとつひとつの草の名前、
季節ごとの移り変わり、そしてこの畑の生態系で持っている役割を教えてくれました。

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あえて特定の草の種を蒔いたり、時にはしっかりと刈り込んだり。
「植物は話をしてくれない。だからじっと見つめて考えるしかありません。」
まさに終わりのない自然への挑戦です。


都濃ワインのたどってきた歴史、今ワイン造りの現場にあるさまざまな状況、
農家の人々との関係、醸造する側と栽培する側の意識の変化…。

どの言葉にも、なるほどと頷かされる説得力と深い洞察力に満ちています。
そして赤尾さんの言葉に力強さを与えているのは、
未来への課題とそれを実現するための活力。
つまり簡単にいえば(あまり好きな言葉ではありませんが)「夢」です。

各ワインのテイスティングにも付き合っていただき、
醸造の現場でもこれから試してみたいことなどをいろいとろとうかがいました。

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4月にリリースされたばかりの「シャルドネ エステート2008年」は
ボトリングからまだあまり間もないからか、やや閉じ気味。
香りもおとなしく、まだすべての実力を発揮してない気がします。
それでも柑橘のニュアンスがとても魅力的。
少しだけ寝かせれば、かなりイイ感じになりそう。

「シャルドネ アンフィルタード2008年」は芳ばしい樽の香りがイイ感じ。
骨格のしっかりしたシャルドネはその香りに負けていないどころか、
ふくよかな果実味と絶妙のバランスを保っています。
今飲んでもスゴく美味しいのですが、こちらも少し落ち着けば
とても芳醇なワインになるはずです。

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「マスカット・ベリーA エステート2008年」はトップに品種独特の香りがして
変な言い方ですが「ベリーAらしいベリーA」。
フィニッシュは軽めですが、とてもチャーミングなワイン。
ほんの少し冷やせば、鉄板焼きなどの肉・魚混ぜ混ぜのグリル系にバッチリのはず。

「キャンベル・アーリードライ 2008年」は楽しくワイワイと飲めるタイプですが、
ボディは想像以上にしっかり。
決してぼやけない味わいの、きりっとしたワインです。
都濃ワインでは、なるべくラブルスカ香を抑えるよう、苦心しているそうです。

「毎日毎日、畑へ行き、それぞれの葡萄の変化や違いを
 しっかりと見極める。
 そうしているからこそ、できるようなワインを造りたい。」

おそらく近い将来、その言葉が「なるほど」と納得できるワインが
世に出ることでしょう。

「小畑は機関車のように、すごい勢いでどんどん進んでいく。
 だから時には衝突も起きる。
 それをフォローして、具現化していくのが自分の役目です。
 2人しかいないから、ずるずる流れていかないよう
 あえて反対のことばかり言うこともありますよ。」

「醸造に関していえば、自分はまだとても小畑にはかなわない。
 自分は『片手にワイン、片手には土』というのが信条です。」

今後の東京などでの展開についてうかがったところ、
まず地元でしっかり消費を増やし、足元をしっかりと固めてからにしたい、
というのが赤尾さんの本音のようです。
数万本のワインも、本当はすべて対面で販売したいくらいだとのこと。
その気持ち、想像できるような気がします。

3月にうかがった小畑さんのお話にも強烈なインパクトがありましたが、
赤尾さんとの出会いはある意味、それ以上の衝撃でした。

「こないだの都濃ワインは小畑バージョン、今日は赤尾バージョンですね。」と
ご本人は笑っていましたが、ホントにどちらのバージョンも凄いです。

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都濃ワイナリーのクリーンなワイン、洒落たエチケットの奥には
桁外れの情熱が潜んでいました。
その素顔はワイナリーを訪ねてこそ、知ることができたといえます。
旅行を通じて、またでっかい収穫を得ました。

お忙しいところ、長い時間を割いていただいたことに
改めてお礼をいい、ワイナリーを後に。

赤尾さん、ありがとうございます!とても濃密な時をすごすことができました。
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by inwine | 2009-06-06 07:49 | ワイナリー訪問
九州の旅<3> 久住ワイナリー
これまで天気に恵まれてきましたが、この日は朝からあいにくの雨でした。
まだ梅雨入り前とはいえ、もう6月。ある程度は仕方ありません。
次の目的地、久住ワイナリーへ向かいます。

山岳の多い九州では、はっきりいって電車の便はあまりよくありません。
ガイドブックやHPに書いてある「最寄の駅」まで行ってからタクシー、
なんて風に行こうとすると、お金も時間もとんでもなくかかってしまいます。

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だからメインの交通手段はバス。
これまでの行程でもずっとバスを重宝してきました。
高い山の中腹にある久住ワイナリーも、
当然電車より車のほうがずっと便利な場所にあります。

ガイドブックによれば「豊後竹田駅からバス、もしくはタクシー」とありますが
今回使ってみたのはJRの「あそ・ゆふ高原1号」。
発着駅までのJRの切符を買っていないと乗れないという変則的なバスで、
各目的地に一定時間止まり、ふたたび客を乗車させて次の目的地に向かうという
いわば半観光バスです。

実はこのバスの停車地はワイナリーではなく、花公園という別の観光名所。
地図ではすぐ近くに見えたので、これに便乗してみたわけです。
つまり他のお客さんたちがこの公園で観光している間に、
単独行動でワイナリーを訪問するという作戦。
はたしてどうなるでしょうか。

久住という場所はダイナミックな景観が有名らしいのですが、
バスが進む間に雨は本降りに。もはや土砂降りといってもいい強さになってしまいました。
そのため売り物の絶景は霧に包まれて何も見えず。
案内してくれたガイドさんはひどく残念そうでした。

バスは狭く険しい山道をジェットコースターのように爆走していきます。
由布院から1時間40分ほどで、花公園に到着しました。

降りる際に、ワイナリーの場所を尋ねてみました。
すると、なんとガイドさんも運転手さんも「知らない」との答え。
いやな予感が頭をよぎります。
ガイドさんが花公園の人に聞いてみてくれたのですが、
返ってきたのは「あっちのほうらしい」的な答え。
ヤバイ…。ちょっと甘く見すぎていたようです。

ひとまずお礼を言って、「あっちのほう」へ。
荷物を抱え、ゆるやかな坂道をしばらく歩きました。
しかし案内板も見当たらず、雨は容赦なくたたきつけてきます。
目の前には馬の放牧地が広がり始めました。

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うーん、どうしようか。
悩み始めたころに、小さな矢印を発見!

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少なくとも方向は合っていたようですが、距離はまだ分からず。
けれど、とにかく前進です。

ほどなく大きな看板が見えてきました。到着です!

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どうやら私の作戦もそれほど見当はずれではなかったようです。
胸をなでおろして、売店とかかれた部屋へ。
おお、確かに試飲コーナーがあります。

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さっそく数アイテムの試飲をお願いしました。

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途中から製造主任の中澤さんにお相手していただくことになりました。
本格的にスタートしてからまだ3年。これから未来が待っているワイナリーです。

「これから、と言っているうちにもう3年も経ってしまいました。」と中澤さん。
主任という肩書きですが、現在、醸造はお一人で手がけているとのこと。
「常に何かしら仕事があって、ぜんぜん休めませんね。」
どこのワイナリーも、皆さん大変です。

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発酵を途中で止めた甘口シャルドネはすっきりした甘さ。
「年配の方が多いので、やはり甘口は人気があるんですよ」とのこと。

「ションベルガー」はあまり聞きなれない品種ですが、
「シャスラ×マスカット・ハンブルグ」という交配種。
日本では山梨のスズランワイナリーでもワインを作っているようです。

最初の香りや口当たりで、ドイツ系品種独特の個性をしっかりと感じます。
やや甘口ですが、ボディはかなりしっかり。
「去年はもう少し甘くしたんですが、
 今年の作りなら食中酒としてもいけると思います」とのお話でした。

2種類のメルロは同じ畑の葡萄ですが、ヴィンテージ違いで
キャラクターもはっきりと異なります。
2007は樽もしっかりときいていて、どっしりとした作り。
一方、2008は若々しい果実味が前面に出たワインです。

「葡萄を丸かじりしてるみたいですね」と聞いてみると、
「よく言われます」とニッコリ答えてくれました。

「一番、力を入れているワインは?」と聞いてみたところ
「山葡萄」というちょっと意外な答えが。
正確には山葡萄そのものではなく、
地元で自生していた山葡萄と
メルロやピノ・ノワールを掛け合わせた品種だそうです。

うーん、飲んでみたい…。
でも残念ながら現行ヴィンテージはすでに売り切れ。
まもなく次のヴィンテージをリリースするそうです。
山葡萄らしく酸が強いとのお話でしたが、ズバリ興味あります。

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ワイナリーの前の斜面には広大な垣根の畑が一面に広がります。
広さは5ヘクタール。雨の中でも壮観でした。

この地の標高は850メートル。
冬はひざぐらいまで雪が積もることもあるそうですが、
一番の難敵は収穫時に吹く強風ということでした。
葡萄の実が受けるダメージはかなり深刻だそう。
もちろん台風もあるので、栽培にはかなり苦労されているようです。

ワイナリーを後にして、畑にも少しお邪魔してみました。
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背の低めの樹たちが、厳しい環境に負けじと育っています。

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久住ワイナリー、これからも注目していこうと心に決め、
ぎりぎりでバスに戻ることができました。
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by inwine | 2009-06-03 23:20 | ワイナリー訪問
九州の旅<2> 由布院ワイナリー

九州の旅、次に訪れたのは由布院ワイナリー。
由布院は観光地として有名ですが、ワイナリーがあるのは隣の南由布。
こちらはかなりのんびりとした土地で、駅も無人駅です。

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まずは今日の宿「ゆふいん時遊館」へ。
この宿の隣にはソーヴィニヨン・ブランの畑があります。

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実はここの葡萄から宿専用のワインが作られているんです。
醸造はもちろん由布院ワイナリー。
栽培はワイナリーをアドバイザーとして、所有者のホテル側が管理しているそうです。
このワインの一般販売はないそうなので、今夜の食事が楽しみ。
ワイナリーへ向かう前に畑を見せてもらいました。

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写真のように周囲は水田。このあたりは本当に水田が多く見られます。
後から聞いた話ですが、この畑も元々は田んぼだったとのこと。

はたして今年はどんな年になるのか。

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さて荷物を預かってもらい、ワイナリーへ!

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きれいな外観です。案内していただいたのはスタッフの田羽多さん。
最初にシャルドネバレル615・2007と
中川サンジョヴェーゼ・ロゼ「SAKURA」を試飲させてもらいました。

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「615」とは葡萄園のある土地の標高。つまり615メートルです。
一般的に葡萄栽培の限界標高は800~1000メートルと
言われているそうなので、なかなかの高地といえます。
(ちなみに赤で力を入れている山ソーヴィニヨンのワイン名は「645」)

樽熟成期間は一年未満。新樽はほとんど使わないそうです。
やわらかい樽香がエレガントな柑橘系の香りとぴったり。
ボディもしっかりと感じられ、
さらにフィニッシュには果皮のニュアンスと豊かなミネラル感が。
とても綺麗で魅力的なワインです。

サンジョヴェーゼのロゼはフレッシュな果実味があふれる
チャーミングなワイン。
赤ワインの醸造フローを経て作られていて、色もロゼとしてはやや濃い目。
骨格もきちんとあるため、食事と一緒にしっかり楽しめるワインに仕上がっています。

現在、ワイナリーで正規に販売しているのはこの2アイテムのみ。
「無理にたくさんは作りません。だから売り切れたらそのまんま。」と笑う田羽多さん。
うーん、潔いです。

次に中の設備を案内してもらいました。現在はほとんど作業はお休みとのこと。
醸造担当の東さんもお休みされていて、お話は聞けませんでした。ちょっと残念!

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醸造作業は東さんがほとんど一人で行っているとのこと。
ピジャージュなどの手作業もひとりきりだそうです。

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そのためか各設備は、コンパクトでいかにも効率良さそうな配置でした。
手作り感がリアルに伝わってくる感じです。

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この樽の中に眠っているのはシャルドネ。香りだけテイスティングさせてもらいました。

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さきほどの2007年同様の柑橘系の爽やかな香りに加え、
こちらはエステル系というか、より甘い果物のような濃厚な芳香が。
いいですね~。
まもなくボトリングして、年内にはリリースする計画だそう。
その日が待ち遠しくなりました。

「日本では風土に合った日本らしいワインを作らないとダメ」と田羽多さん。
「いきなりワインの東大に入ろうと思っても無理ですよ」と
独特の言い回しで持論を語ってくれました。

ちなみに田羽多さんが最近、感銘を受けたのは韓国のマスカットベリーA(!)。
現地で味見したそうですが、甘さも凝縮感もかなりのものだそうです。
畑はすべてギュイヨ・サンプルの垣根。糖度はなんと24度まで上がるとのこと。
内陸で栽培されているらしいのですが、なんだか凄い話です。

農家が醸造したワインも飲ませてもらったところ、かなり美味しくて驚いたという話でした。
もしかしたら将来は韓国から葡萄が…?
ウソみたいな話ですが、意外と有り得ないことじゃないのかも。

長々とお話を聞かせていただいた田羽多さん、ありがとうございました!

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試飲コーナーの棚には訪れた有名人のサイン入りボトルが。
芸能人の名に混じって、ブルゴーニュのシモン・ビーズや
初代世界最優秀ソムリエのジャン=リュック・プトーの名前もありました。

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最後はサンジョヴェーゼの畑へ。こちらも周囲は水田です。

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隣の小屋には鴨がたくさん。合鴨農法でしょうか。

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さて宿へ戻って、お待ちかねの夕食です。

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いやー、正直ヤバイです。
オーナーのお母さんが手がけられているという野菜がメチャうま。
煮物、焼きもの、てんぷら。いちいち美味しくて、ほっとため息が出るほど。
味付けも絶妙で嬉しくなります。
実を言うと、昨日の宿の料理があんまりイマイチモゴモゴモゴ…だったので
よりいっそうの感激でした。

さて、お待ちかねのソーヴィニヨン・ブランは?

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いやー。これも負けず劣らずイイ!
トップノーズは品種独特の青いハーブ香が強く迫ってきます。
そしてグレープフルーツよりも強めの柑橘系の香り。
やや酸化のニュアンスが感じられますが、
それがボディにいっそうのふくらみを与えている気がします。

味わいは爽やか。でも途中で尻すぼみになることなく、
中盤のボリュームがあり、ミネラルもしっかり感じます。
野菜の天ぷらとの相性はお世辞抜きで感涙ものでした。

お話を聞くとこのワイン、実はアルコール度数が14%近くあるとのこと。
収穫時の糖度はなんと22度まで上がるものもあるそうです。

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すごくボディのあるワインだなと思ったのですが、それも納得。
実際、豊後牛のイチボ肉の鉄板焼き
(これがまた脂っこくなく、旨みたっぷりで激旨)にもバッチリ合いました。

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こんなSBもあるんですねー。ホントいい経験をさせていただきました。

ちなみにこのホテル、交代制の貸切露天温泉も実に快適。
部屋の広さや清潔さも含めてかなりオススメです。
由布院ワイナリーにお出かけの際は、ぜひ!
(写真は部屋から見える葡萄畑)

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いやー九州ワイナリーめぐり、なかなか刺激的な経験が続きます。
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by inwine | 2009-06-03 06:20 | ワイナリー訪問
九州の旅<1> 安心院葡萄酒工房

ぽっかりと大きな時間が空いたので、九州に出かけました。
最大のお目当ては、もちろん各地のワイナリー。
かなり直前に行くことを決めたのでバタバタしましたが
なんとか準備オーケー。
実は九州に行くこと自体が初めてなので、かなり楽しみです。
ウマいもんもいっぱい食うぞ!

まず最初に訪れたのは、安心院葡萄酒工房。
3月のたこやき坊主さんのワイン会でお世話になった古屋さんを訪ねました。
大分空港からリムジンバス→タクシーと乗り継いで到着です。

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まず醸造設備を見学させてもらいました。
ずらりと並んだ樽の中身はベリーA。作業中の周囲には甘~い香りが漂っていました。

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現在、醸造スタッフの仕事はボトリング作業が中心とのこと。(お忙しいところスミマセン!)
こちらは樽の洗浄作業風景。

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貯蔵タンクから試飲させてもらった2008年のシャルドネは、オークの風味と果実味のバランスが抜群。
ボディもふくよかで、非常にスケールの大きなワインです。

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グラスに注いだばかりのときはやや閉じ気味でしたが、
少しスワリングするうちに、シトラス系の香りがどんどん立ち上ります。
完熟したグレープフルーツの皮の香りといったイメージ。
そこにほんのりとした樽の香りがうまい具合にのってます。
(ちなみに新樽比率は10~20%とのこと。)

「『素顔も美人だけど、化粧も綺麗に整ってる』って感じですね。」と言うと、
「そうでしょ?」と嬉しそうに答えてくれました。

次にワイナリー裏にある自社畑へ。
決して大規模な広さではありませんが、こちらの葡萄は赤のフラッグシップワイン
「メルロー・リザーブ2005年」にも使われています。

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ちなみに「リザーブ」と名のつくワインは何種類かありますが、
いずれも畑ごとに決めているわけではなく、
収穫した葡萄をワイナリーで選果する際、どれを使うか決めているそうです。
ただし仕込んだ後でも「リザーブ」という名にふさわしくないと判断すれば、
リリース自体しないとのこと。
実際に2006年の「メルロー・リザーブ」は世に出ていません。

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こちらの畑は樹齢7年。まだかなり樹勢が強く、暴れ気味だそうです。
大きな葉が印象的でした。

現在はシラーやテンプラニーリョなども試験栽培中。サンジョヴェーゼも検討中とのお話でした。

最後に売店のカウンターで、試飲をさせていただきました。
今回、特に印象的だったのは「安心院ワイン赤 マスカットベリーA」。
ヴィンテージ表記のないこのボトル、豊かな果実味と熟成感が見事に共存していて、
なんだかブルゴーニュの熟成ワインのよう。実はこの味わい、ブレンドの妙味の成果なんだそうです。
こういうやり方もあるんですねー。古屋さんの熟練テクに脱帽という感じでした。

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ワイントーキョーでお会いした岩下さんとも再会。
「ワインが瓶詰めされて初めて、やっと一息つける」という言葉には
台風直撃の危険に毎年さらされる、九州の造り手さんならではの切実さがありました。

葡萄栽培の話から、農家さんの話になり、
話題は受賞ワインとしてもおなじみの「イモリ谷」の話に。
実はこの畑を所有する方はまだ20代の若者だそうです。
お父さんの跡を継いで、葡萄栽培を行っているとのこと。
全国的に農業従事者の高年齢化が危惧される昨今ですが、
安心院ワインの未来はかなり明るいかもしれません。

醸造に関して目からウロコのようなお話も聞けて
疑問に思っていたこともいくつか解決。とても収穫のある訪問となりました。

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最後はこの日の宿泊地、別府までの交通手段まで丁寧に調べていただきました。
古屋さん、岩下さん、スタッフの皆さん、本当にありがとうございました!
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by inwine | 2009-06-01 21:35 | ワイナリー訪問
池川仁さんの畑

ワイン仲間の方にお誘いをいただき、念願の池川仁さんの畑を見せていただきました。
池川さんはシャトー酒折の「キュヴェ・イケガワ」でも知られる、革新的な葡萄栽培家です。

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「環境のまったく違うヨーロッパの栽培の教科書を、
 そのまま日本に持ち込んでもうまくいくわけがない。」

「カリスマ」という言葉を感じずにはいられない、池川さんの言葉には
圧倒的な迫力と説得力があります。
その考え方の根本は日本の土地で長く培った葡萄栽培のノウハウを、
ワイン用葡萄にも生かすというもの。

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土壌や気候、病害、そして葡萄そのものと実際に向き合ってきた
池川さんだからこそのアプローチですが、
同時にまったく自然で真っ当な向き合い方だともいえます。
ワインをめぐってしばしば乱発される「テロワール」という言葉が、
本来どういう意味なのかを考えさせられました。

「匂いをかいでみて」と言われて手に取った畑の土は、他の畑とはまったく違う懐かしい匂い。
少し口にも入れてみましたが、他所の土は強烈なエグ味があるのに対して、
池川さんの畑は、やはり遠い記憶の土の味そのものでした。
土壌の違いというものを、文字通り味わえた気がします。

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「生食用葡萄に比べれば、ワイン用葡萄のほうが楽」という言葉には、
長い経験に基づく確固たる自信が伝わってきますが、
池川さんの凄いところは決して旧来の栽培方法に拘ってはいないところ。

というより過去の常識にはまったく流されることなく、
きわめて独創的な手法で成功を収めています。
その根底にあるのは、何よりも
「人間は葡萄の生育をコントロールするのではなく、ただ手を貸すだけだ」
という考え方です。

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そしてさらに特筆すべきなのは、
こうした新しい手法をすべて理論体系化しているところ。
決して『感性』だけの産物ではありません。

たとえば葡萄の樹の仕立て方や接木の手法ひとつとっても
従来との違いやその意味を、植物生理学の観点から詳細に説明していただけました。

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「当たり前」の出発点、大胆な発想、理論的な裏づけ、確かな目標、そして成功。

「私は畑でワインを作っているんです」と語る池川さん。
従来の日本の葡萄農家には、ほとんどなかった発想のはずです。

池川さんと強力タッグを組むワイナリー、シャトー酒折の井島さんも
やはり実に説得力のある、そしてきわめて現実的なポリシーを持つ方です。

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醸造設備を見せていただくとき、井島さんがいつも誇らしげに言うのが
「機械の分解と洗浄がうちの最大の仕事です」という言葉。

清潔な環境を常に維持して雑菌を徹底的に排除、
葡萄のポテンシャルだけを純粋に引き出すというやり方は、
池川さんの葡萄にはまさにぴったりのような気がします。

「ヨーロッパではワイナリーが栽培も行うのが一般的だけれど、
 日本では餅は餅屋。葡萄農家の方に任せるのがいいと思う。」
という言葉にも、なるほどと頷かされます。

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井島さんは新しい技術の導入に関しても、あいまいな点は一切ありません。
「必要と判断すれば、必要なモノを使う」というのがポリシー。
私個人の考えですが、これこそがものづくりのうえで
一番安全で、信用できるルールのような気がします。


最後に池川さん、井島さんと試飲させていただいた際、
天然酵母での発酵について意見を聞いてみました。
クリーンで現実的なワイン造りをされるお二人には、一見真逆のアプローチにも思えますが
だからこそ尋ねてみたくなったのです。

意外にも井島さんは「実は興味がある」と教えてくれました。
「池川さんの葡萄を、その葡萄自身の酵母で自然に発酵させてみたい気もするんです。」

「葡萄の成長に手を貸すだけ」という池川さん。
「葡萄の力を引き出すだけ」という井島さん。

その言葉は、まったく遠くに位置するようにも思える、
いわゆる「自然派ワイン」の主張とも、どこか重なって見える気もしました。


現在、お二人はさまざまな海外用品種も栽培・醸造中とのこと。
そのボトルが世に出たとき、日本ワインの未来はまたひとつ開けるはずです。

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(K・Nさん、写真提供感謝です!)
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by inwine | 2009-05-29 22:22 | ワイナリー訪問
山梨 『アルプスワイン』

山梨のアルプスワインに行ってきました。
春になるとピンク色のきれいな花が一面を埋め尽くす、桃の町・笛吹市一宮町にあるワイナリーです。

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ワイナリーのショップは、こんな可愛らしい外観。中のインテリアも勝沼などではあまり見られないオサレな雰囲気です。

そして迎えるワインメーカーは、この人。

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前島良さん。男っぽいルックスとお茶目なトークが魅力の異色の醸造家です。

南仏のシャトーのような建物と、中にいるこの王様との間には若干のギャップがあるような気も…。
さらに前島さんのワインを飲んでみたら、もっと意外な感じを受けるかもしれません。
実録ヤクザ映画をこよなく愛する前島さんのたたずまいは、ワイルドという言葉がぴったりくる雰囲気。

でも手がけるワインの味わいは非常に繊細です。

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特に上位シリーズであるプラチナシリーズの味わいは、トップノーズやひと口目の優しさが本当に印象的。
マスカットベリーAやシラーのしなやかさには本当に驚かされます。

なので最初は「ワインと造る人は違うんだな」と思うかもしれません。
でもワインをさらに飲み、前島さんと話すとその印象は少しずつ変わっていきます。

前島さんの言葉は荒っぽいながらも楽しく、すっと相手をひきつける魅力を持っています。
また細かい気遣いが、言葉の端々から見え隠れするのも分かるはず。

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そしてワインはちょうどその逆。飲んでいるうちに、単なる飲みやすさだけではなく
奥に、まさにワイルドでしっかりとした骨格を持っていることが分かってきます。
実は赤ワインの多くは除梗をしていないとのこと。
どうりで柔らかさだけでなく、タンニンや酸もしっかりあるわけです。

そう。実はワインと造り手は、とてもそっくりだったわけです。

こうした発見こそが、ワイナリー訪問の醍醐味。
『ワインは造り手そのもの』ということをいつもしみじみと実感できる瞬間です。
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by inwine | 2009-02-01 10:11 | ワイナリー訪問
「塩尻ワイナリーフェスタ2008」 <3>
塩尻2日目はフェスタ本番のワイナリーめぐりへ。
各ワイナリーはそれぞれ趣向をこらしてお客さんたちを迎えます。

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畑や醸造設備の見学から、樽熟成中のワイン試飲、数十年前に瓶詰めされたボトルがずらりと並ぶセラーの公開なども。
中でも面白かったのは五一ワインのトラクターツアー。畑の中をトラクターの荷台に乗って回るというものです。今回は乗りませんでしたが、農場気分がばっちり味わえそう。

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また各ワイナリーの敷地内にはさまざまな食べ物の出店も出ていました。屋台っぽいものから、牛ほほ肉の赤ワイン煮なんていう本格的な料理まで。アップルパイなどの甘いデザートもあったりして、こんなところにもそれぞれのカラーが出ているような気がしました。
信濃ワインでは以前、お目にかかった三宅さんとも再会しました。ここではぶどうを食べて育った豚肉のソーセージとワインのセット(有料)にチャレンジ。ソーセージもワインも優しい味で美味しかったです。

途中でワイナリー近くの蕎麦やさんにも寄り道しました。

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こちらの蕎麦が想像以上のウマさでびっくり。そして地元ワインリストの充実ぶりに二度びっくりです。

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レジの近くには1989年ヴィンテージのワインも飾られていました。

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メルシャンは地下セラーの公開のみ。受付には昨晩お会いした塩原さんがいらっしゃいました。

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午後には城戸ワイナリーの畑にも足を伸ばしました。

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今回、城戸ワイナリーでは施設の試飲や見学はなく、駅前での試飲だけの参加。なので訪れる人もいなかったようです。

丹精に手入れされ、傍らにバラの咲く垣根。真っ直ぐきれいに仕立てられたスマート・マイヨルガー方式の棚の畑。

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すばらしい景観でした。下草も豊かに生い茂っていてイイ感じ。
これだけを見に、塩尻を訪れてもいいほどの美しさです。

近くのりんご園でおみやげのりんごをゲットした後、イベントのメイン会場である駅前へ。
ここにも出店がたくさん出ていて、お祭りのような賑わいです。昨夜のパーティーの会場、のでvinも出店していて、美味しそうな生ハムなどを売っていました。私が買ったのは「コンウインナー」。どんな料理かと思ったらウインナーに油揚げを巻いたものでした。「油揚げ → キツネ → コン」というわけです。たぶん。

最後にまたまた試飲ブースの城戸さんにごあいさつして、ふたたび写真をパチリ。

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駅前ではお気に入りの長野の日本酒も見つけて購入しました。盛りだくさんの塩尻への旅はこれで終わり。濃い二日間でした!

「塩尻ワイナリーフェスタ」、年齢、性別問わずいろいろな楽しみ方のできるイベントです。(お子さんにはジュースの試飲もアリ)
ワイナリーを身近に感じられるこういう機会は、なかなか貴重かもしれません。
でも長野はちょっと遠いな…という方は勝沼でもこんな↓ツアーが。興味のある方はぜひ!

http://www.yamanashiwine.com/wt2008/event.html
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by inwine | 2008-11-01 13:14 | ワイナリー訪問
「塩尻ワイナリーフェスタ2008」 <2>
「塩尻ワイナリーフェスタ2008」に伴って行われた、造り手を囲むパーティーに出席しました。
ここでは各ワイナリーの造り手の方も大勢参加。皆さんから貴重なお話をうかがうことができました。
中でも興味深かったのは、メルシャンのヴィンヤード・マネージャー・塩原博之さんのお話。
以前、斎藤浩工場長に写真を見せていただいたマリコ・ヴィンヤードの栽培責任者です。

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丸子(まりこ)の畑は総面積12.5ヘクタール。よくある言い方でいうと、東京ドーム3個分弱です。実に広大な畑ですが、管理・統括ははなんと3人のスタッフでまかなっているとのこと。ご苦労は容易に想像できます。
栽培された葡萄は現在、ブレンド用として製品化されていますが、「マリコ」の名がつくブランドのリリースももうまもなく。
すでにワインは瓶熟成中で、会社のゴーサインを待っているところだそうです。価格帯は長野メルローぐらいになるのでは、ということでした。ボトルを手にするのが今から楽しみです。

井筒ワインの野田森さんには同じ土地の斜面上部と下部の葡萄を別々に仕込んだワインを飲み比べさせていただきました。

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2つのキャラクターはまったくの別ものでした。エレガントな上部とがっしりしたボディの下部。個性は違うけれど、どちらもそれぞれに美味しい。ちょうど兄弟のようなこのワインは、最終的にブレンドしてリリースされるそうです。

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今回、もっとも長くお話を聞けたのはKidoワイナリーの城戸さんでした。
内容はワイン作りの哲学や求めるワインのかたちに始まり、小規模ワイナリーならではのご苦労、今後の計画や展望などから、盟友・ボー・ペイサージュ岡本さんのお話や、いわゆる自然主義のワイン作りに関する考え方、そのほかそのほか…。

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「安くて非常にいいワインは日本では難しいけれど、高価格帯になればフランスと同じレベルを実現できる。
僕は世界のスタンダードというものは、やはり意識する。」という言葉には「ワインは造り手なんだ」という強いプライドが伝わってきます。
そしてやはり「宿命的風土論」への疑問を投げかけた日本ワインの父・麻井宇介氏の著作を自然と思い出さずにはいられませんでした。

ビオの手法について意見をうかがうと「特に肯定も否定もしない。大事なのはその方法が葡萄やワインのためにいいかどうかということだけ。良い部分は取り入れるし、考え方が合わないものもある。」と明確に語ってくれました。「ただし土壌や環境のことを考えてビオの手法を取り入れるとすれば、それは本当にいいこと。」とも。また「ビオの考え方は今は神秘的に見えるけど、昔はそれが一番合理的だったんだと思う。」という言葉には、なるほどと思わず手を打ちました。

また発酵についてはヨーロッパ系品種はすべて野生酵母によるもの。これも野生酵母そのものにこだわるというより、それを上回るほどの培養酵母が見当たらないからだそうです。つまり良いものがあれば、否定する理由はないという考え方。
こうした自然体で柔軟な発想は、素人でも素直に共感できます。なんというか非常に現実的で明快。

また野生酵母を選ぶもうひとつの理由は、培養酵母だと「発酵が早く始まりすぎてしまうから」だそうです。城戸さんによれば発酵が始まる前、いろいろな微生物が果汁中で活動している時期は、醸造過程において非常に重要とのこと。野生酵母による発酵については「発酵が始まってくれるのをじっと祈りながら待つ」みたいなイメージを勝手に妄想していたので、なんだか意外な感じがしました。

SO2の量はメルロに関しては特に少なめ。これも単純に量を減らすことだけが目的ではなく、メルロの場合、亜硫酸の影響で堅いワインになってしまうことが最大の理由だそうです。ちなみに全体量の大部分は破砕直後に入れるとのこと。これもやはり発酵を遅らせることが目的ということでした。

「ぶどうの出来不出来があるから、毎年毎年ワインが良くなっていくことはありません。それに栽培から醸造の全工程ですべて 満足するようなことは今後もないでしょう。それでもその年その年に経験したさまざまなことは、必ず蓄積されてワイン造りに活かせる。」
そう語る城戸さんのワインからは、今後も目を離すことはできません。今後の動きとしては、栽培中のカベルネ・フランがトップブランドの「プロジェクトK」にブレンドされる可能性もあるとのこと。(ただし、あくまでも葡萄の出来次第だそうです。)
そして楽しみなのがピノ・ノワール。今年収穫したぶどうがいよいよ来年、初リリースされる予定だと教えていただきました。

寒冷な塩尻は、山梨などよりも収穫時期は遅め。その中でも城戸ワイナリーは、さらに例外的なくらい収穫が遅いそうです。つまり畑の作業も仕込みもまだまだこれからということになります。この時期のイベント開催は、かなり負担が大きいはず。それでもお疲れの中、いろいろなお話を聞かせていただき、感激しました。本当にありがとうございます!

パーティーの後はホテルで一泊。翌日はワイナリーめぐりに向かいました。
というわけで、もう一回続きます。長くてすみませんが、ヨロシク。
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by inwine | 2008-10-31 23:18 | ワイナリー訪問
「塩尻ワイナリーフェスタ2008」 <1>
塩尻の各ワイナリーを臨時の循環バスでめぐる「塩尻ワイナリーフェスタ2008」に行ってきました。

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今年は10月25・26日の週末2日間にわたって開催されました。
私は「日本ワインを愛する会」事務局主催のツアーに参加。一泊二日のスケジュールで、盛りだくさんのイベントを満喫させていただきました。

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まず初日は市内のホテルで「ヌーボーワインの夕べ」に参加。各ワイナリーの新酒を立食形式で楽しむパーティーです。
ここでは志学館高校で醸造を教えている高山先生にお話をうかがうことができました。志学館は今年の国産ワインコンクールで銅賞を受賞して話題になった公立高校です。

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同校は昭和18年に果実種類製造免許を取得。昭和40年代からワイン作りを教育の一環として行ってきたとのことです。フランスへの研修旅行も行うなどプログラムは本格的。
実習を行うのは女子生徒が多いそうで、栽培から醸造まであらゆる工程に関わっています。
校内の敷地で栽培されているのは銅賞受賞のメルロほか、ベリーA、リースリング、ピノ・ノワール、セミヨン、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネなどなど実に様々な品種。
うーん、スゴイです。
受賞ワインを飲んだとき、まず感じたのはしっかりした樽香。お話をうかがったところ、新樽もかなり購入されているとのことでした。栽培・醸造を学ぶには、実に恵まれた環境のようです。この学校から業界を担う醸造家たちが続々と巣立つ日も近いのかもしれません。
ちなみに今回参加されていたもう一人の先生、西牧さんは壇上でシャンパン・サーベルの技を披露。会場中の拍手を浴びていました。やりますね、先生。

このパーティーは一時間ほどで中座。今度は駅近くにあるレストラン「のでVin」に移動して、造り手の方々を囲む会です。
参加されたのは井筒ワイン、Kidoワイナリー、サントリー、信濃ワイン、林農園、メルシャン各社のスタッフ。

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中でもKidoワイナリーの城戸亜紀人さんには非常に長時間にわたり、いろいろなお話を聞かせていただきました。(イベントのお疲れの中、申し訳ありません!)
しかしその内容は、私にとって実に大きな収穫でした。

長くなってしまいそうなので、この続きは次回。
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by inwine | 2008-10-29 11:19 | ワイナリー訪問
シャトレーゼ勝沼ワイナリー 2008年収穫<その3>

またまたまたシャトレーゼの収穫に行ってきました。今回のぶどうは甲斐ノワール。
ワイナリーにとってもこれが最後の収穫だそうです。お疲れさまでした!

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これは収穫隊隊長による朝礼風景。

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少しでもたるんでいる者がいると厳しいゲキが飛びます。(ウソ)

一面に広がる棚の畑で、いっせいに収穫が始まりました。

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ぶどうが健康だったおかげもあって、作業は順調に進行。
午前中で終わるかなと思ったのですが、惜しくも少しだけ残して昼食タイムに。
お昼は仕出しの豪華な惣菜と大量のおにぎり、そしてワインも出していただきました。

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ベリーAと甲州、そしてデラウェアの新酒。どれも文句なしの美味しさで、楽しい昼食でした。
ごちそうさまです!

しばしの休憩ののち、ふたたび畑へ。その後すぐに作業は終了しました。

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ワイナリーに戻った後は、仕込みのお手伝いにも参加。

入り口はこんなカンジ。

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それからこう流れて…。

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こんな作業も。

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そしてここを通り…。

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最後はこちらへ。

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夜は石和の焼肉屋さんで打ち上げ。今回は戸澤さんはじめシャトレーゼの皆さんも顔を出したほか、前回同様、ほかのワイナリーの方も加わるにぎやかさでした。(私は途中で失礼しましたが、飲み会は夜中の3時まで続いたそうです。みんなタフだ。)
ちなみに山梨ワインの野沢さんはこの日、誕生日だったそう。おめでとうございます。(宴会の写真はナシ。撮り忘れた。)

お店の許可を得て、ワインは持ち込み。造り手の方持参のできたてワインや貴重なバックヴィンテージ、それにちょっと怪しいワインも飲ませてもらうことができました。

今年の収穫作業はどこもほとんど終わりだと思いますが、楽しそうだなと思った人は来年、ぜひご参加ください。
mixiのどこかで募集してます(たぶん)。平日に来れる人は特に歓迎されるはず。あと晴れ男・晴れ女の人も手厚くもてなされると思います。
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by inwine | 2008-10-25 10:34 | ワイナリー訪問