大阪 『飛鳥ワイン』

ひめひこワイナリーの次は飛鳥ワインへ。
最寄りの駅は近鉄南大阪線の上ノ太子です。

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この駅、思っていたよりもかなりのどかな感じ。
駅周辺で何か食べようと思っていたのですが、飲食店はまったく見当たりません。
駅前にポツンとある乾物屋さんのような店で尋ねてみても
笑顔で「あらへん」と即答が返ってきました。

ヤバイです。ホテルで朝食を食べたとはいえ、これからまだ長丁場。
ずっと冷たい強風が吹き荒れてるし、昼食抜きはかなりキツそうです。
「どうしようか…」と同行のT氏と顔を見合わせました。

結局、この乾物屋さんでカップラーメンを購入。
お湯を分けてもらって、店前のベンチでずるずると食べることにしました。
寒空の下で食べるラーメンはちょっとわびしいけど、これはこれで楽しい。

ワイナリーは、市街からやや外れたところに位置するケースがよくあります。
本当は大きな町などで小休止しつつ移動すればいいのですが
ある程度、効率重視で回らないとあちこちに行けません。

だからどうしても、昼食などは後回しになりがち。
当然のことながら、ほとんど土地勘もありませんから、
行ってみたら何もなかった、という事態も時にはやむを得ないのです。

九州に行ったときは、昼食がとんがりコーン一箱だったこともありました。
でも、そんなことも逆にいい思い出になったりするものです。



さて少しお腹が落ち着いたとこで、いよいよ飛鳥ワインへ。

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事務所で仲村社長が出迎えてくれました。
とても温和でまじめそうな方です。

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少しご挨拶をした後、すぐに畑を案内していただくことに。

駅からワイナリーまでは上り坂を歩いて数分。
そこからさらに上がっていくと、すぐに葡萄畑が広がり始めます。

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ここ羽曳野市は、昭和初期には柏原市と並んで葡萄の一大産地でした。
当時、大阪は全国で一位を争うほどの生産量を誇っていたそうです。
関東の人間にとっては、大阪のような大都市と葡萄は
あまり結びつかないような気がしますが、
実はワイン造りも非常に古くから行われているのです。

ワイナリーの畑へ向かう間にも、農家さんの棚畑が道の両脇に並んでいました。

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自社畑は山の斜面に広がっています。
作業の効率化を図るため、こんな風にブロックを入れて階段状に。

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ほとんどが垣根仕立て。新しく開墾したところも多く、樹齢は場所によってさまざまです。

丹念に手を入れていることが一目瞭然な、きれいな畑です。

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減農薬、低化学肥料にも取り組んでおり、
昨年、自社畑のデラウェアを使ったワインが
農産物加工品として初めて、大阪府の「大阪エコ農産物」認証を受けたそうです。
後でこの銘柄も試飲させていただきましたが
きれいな酸が印象的なとても美味しいワインで、個人的にも購入させてもらいました。

除草剤は使わずに、いわゆる草生栽培にも本格的に取り組んでいます。
従来の考え方にとらわれない、新しいアイデアを取り入れることもしばしば。
今回、お邪魔した他のワイナリーでも感じたのですが
大阪の人の進取の気性、チャレンジ精神、新しいモノ好きの気風はとても刺激的です。
飛鳥ワインも非常に伝統のある会社ですが、古めかしい雰囲気はまったくありません。

そういえば事務所にお伺いしたときに
大きなディスプレイの新しいMacがあることに気づきました。
実はこの使い手は仲村社長。

後でお話をうかがうと、IllustratorやPhotoshopを
バリバリ使いこなしていると教えてくれました。
一部のワインのエチケットも、デザインから手がけているそうです。
うーん。社長、カッコいいです!

現在は甲州の垣根仕立てにも挑戦中。
先日も仲村わいんの仲村現二社長と共に、グレイスの明野農場に視察にいったばかりです。

しかし、新しい挑戦にはリスクもつきもの。ときには予想していなかったことも起きます。

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これは下草として、芝を植えた畑。
狙いはカバープラントの効果でしたが、
この芝の種類は、これまで葡萄畑ではあまり使われた例がありませんでした。

最初は順調に見えたのですが、そのうち芝の勢いが強くなりすぎて
肝心の葡萄の生育状態が悪くなってしまったそうです。

「下草と葡萄を競争させれば、根がしっかり張る」なんて話をよく聞きますが
実際はそんなに簡単な話ではないのかもしれません。


現在、最も収量が安定していて、同時に高い品質を実現しているのはシャルドネ。
自社畑では他にカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなどを中心に栽培していて
特別銘柄として販売もされています。

一方で将来を見据えた、新しい品種の栽培も積極的に進めています。
また栽培・醸造を担当する若いスタッフ、福井さんも急成長中。

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歴史あるワイナリーは未来への備えも万全のようです。

ワイナリーに戻り、試飲をさせていただきました。

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『シャルドネ 2005』の色合いは淡く、きれいに澄んだゴールド。
シャルドネらしい品種香と柑橘香が立ち上ります。
味わいもレモンのような爽やかな酸味に、ハーブのような清涼感も。
後口の心地よい自然な苦味もイイ感じです。

重量感のあるタイプではありませんが、
葡萄の凝縮感があり、薄っぺらさは感じさせません。
魚介のオーブン焼きなどと一緒に飲めば、あっという間に空いてしまいそうです。

『カベルネ・ソーヴィニヨン 2005』はMLF由来かと思われる甘い香りのあと
カベルネのストレートで柔らかな果実味が現れます。
樽のニュアンスはそれほど強くはありません。
果実味を覆い隠すことなく、いい塩梅で彩りを添えている感じ。
個人的にはとても好きなタイプです。

こちらもシャルドネと同様、品種の個性がはっきりと出ていて
余計な小細工をしない、造り手の姿勢が伝わってくるワインです。
やはりグラマラスなカベルネを求める人には不向きかもしれませんが
バランスよく、チャーミングなワインを求めている人にはオススメです。

さらに「アレも持って来い」と社長が出してくれたのが
ソーヴィニヨン・ブランとリースリング。
まだ試験醸造の段階で、エチケットもありません。
いずれも2006年と2007年のヴィンテージ違いです。

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これがまた実に素晴らしいワインでした。

ソーヴィニヨン・ブランの06は柑橘系というよりも、
リンゴの蜜の部分のような独特の酸味と甘味があり、
柔らかく、豊かな広がりが魅力的です。
粘度も感じられ、みずみずしい果実をダイレクトに感じることができます。

一方、リースリングの07はアールグレイのような華やかな芳香があり
優しい果実味を、芯の通った酸が引き締めています。
バランスがよく、食中酒として楽しんでも最高なはずです。

この2本はカベルネやシャルドネとは対照的に
品種の個性よりもワインそのもののユニークさがとても魅力的。

親しみやすく、スイスイと喉を通ってしまいますが、余韻もしっかり。
飲み込んだあとも、果実感がふんわりと口の中に残ります。
お言葉に甘えて、いずれも2杯、3杯といただいてしまいました。

面白いのは、どちらの品種もヴィンテージによって個性がまったく違うこと。
香りも味も同じ品種とは思えないほどですが、
年が違っても、造りはほとんど変えていないそうです。
はたして、この個性の違いを生んだ秘密は?? なんとも興味深いワインです。

これからいよいよリリースに向けて、本格的な醸造に入る計画とのこと。
そのとき味わえるワインは、また違った個性を持っているのかもしれません。
今からリリースが待ち遠しくなりました。
仲村社長、貴重なお時間と貴重なワインを本当にありがとうございました!
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by inwine | 2009-12-28 10:55 | ワイナリー訪問
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