新潟 『岩の原葡萄園』

新潟のワイナリー、最後は岩の原葡萄園へ。
マスカット・ベリーAの交配などで知られる川上善兵衛が創業。
さまざまな歴史を経て、今に至るワイナリーです。

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今年の国産ワインコンクールでは、『マスカット・ベーリーA 2007』が
「国内改良等品種」部門で史上初の金賞を獲得。
さらに別銘柄も銀賞・銅賞を同時受賞したことが話題になりました。

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JR高田駅から路線バスに乗り、約30分。
道中には『岩の原葡萄園 一号石蔵・文化財』などの案内板も見えます。

案内をしていただいたのは、営業部の鋤柄さん。
石蔵の前で、川上善兵衛の功績やワイナリーの歴史について
簡単な説明をしてもらいました。

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「今、川上善兵衛はワイン用葡萄の交配をした人物として知られていますが
 本来はやせた土地で苦労する地元農民のために
 私財をはたいて、産業を開発した偉人なんです。」

勝海舟との交流でも知られる川上善兵衛ですが
考えてみれば、詳しいバックボーンについてはほとんど知りませんでした。
不明を恥じていると、こんな話を教えてくれました。

「今でも地元の小学校では、善兵衛の研究が学校全体で行われているんです。
 みんな詳しくて、私もかないません。」

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後でこの小学校の研究発表を見せてもらいました。
内容は子供たちが実際に善兵衛に会った人たちを訪ね、
直接インタビューをするというもの。
小学生たちはみずからの素朴な疑問を
おそらく祖父、祖母よりも年上の人々に率直にぶつけています。

歴史的証言ともいえる貴重な口伝を、誰よりも若い世代が受け継ぐ。
研究発表の冊子には、生き生きとした好奇心と
善兵衛の人柄を語る年配の方々の深い想いが
長い長い時間を超えて重なりあっていました。

その光景からは郷土の英雄の偉業を、決して風化させてはならないという
地元の人々の強い意思が伝わってくるようにも思えます。

実は鋤柄さん自身も、善兵衛に人生を決定付けられた一人。
ご出身は長野だそうですが、善兵衛の生き方に影響を受け
地元のワイナリーではなく、岩の原葡萄園を選んだそうです。

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案内してくれた石蔵の中は濃密な雰囲気の空間。
ごつごつとした石の壁から、
当時の作業風景が浮かび上がってくるかのようです。

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この蔵は「二号石蔵」。現在は貯蔵庫として使用されています。
しかし建設当時は、文化財である一号石蔵とともに醸造を行う場所でした。

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ワインの発酵には温度管理が大きなポイント。
発酵によって果汁がアルコールに変わる際、液体の温度は上昇します。
これを放置しておくと、良いワインはなかなかできません。

善兵衛はそのために、山の水を利用することを思いつきました。
トンネルを掘って、冷たい雪解け水を蔵まで引き込み
建物の冷却に用いるわけです。

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これがその「冷気隧道」の跡。
10年ほど前、偶然に見つかったそうです。

残念ながら、このアイデアはあまり成功しませんでした。
これだけの工事をしながら、成果を得られなかったのですから
無念はさぞかし大きかったはずです。

しかし、このトンネル跡は川上善兵衛という人物が
いかに進取の気性と、パワフルな実行力を持っていたかを見事に伝えています。
ゼロからすべてを切り開くという仕事には、こうした素養は不可欠だったのでしょう。

葡萄の交配技術も、基本的に独学でマスターとしたという
善兵衛ならではの力強い歴史の刻印です。

ワイナリー裏手の高台に広がる畑も見せてもらいました。

これはやや変形の一文字短梢。独特のカーブを持った太い樹で、
なんともいえない迫力があります。

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こちらは金賞ワインにも使われた有機栽培転換中の葡萄畑。

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積雪対策のため、手が届かないほどの高さです。

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実際、作業はすべて脚立に登って行うとのこと。
こちらの畑もやはり迫力満点でした。雪との戦いの苛酷さがうかがい知れます。

畑を見て回っていると、「熱心に見てますね」と声が。
作業中のスタッフの方でした。
樹齢や仕立て、肥料などについて詳しくうかがうことができました。

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岩の原ももう剪定は終わりですが、何かと冬支度に忙しそうなこの時期。
お時間を割いていただいて恐縮だったのですが、
あとで何気なく資料を読んでいてビックリ。なんと製造技師長の建入一夫さんでした。
思えばラッキーでしたが、醸造のことなどもっと詳しく聞けばよかった!

帰りは高田駅まで再びバス。ワイナリー前で手を上げると止まってくれました。
鋤柄さん、お世話になりました!

新潟のワイナリーめぐりはこれでおしまい。
またもやいろいろな発見がいっぱいの旅でした。
新潟には新鮮な海産物をはじめ、美味しいものが目白押しです。
ワインは食とは切り離せないお酒。
豊かな食文化の中で、これからももっともっと発展していくに違いありません。
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by inwine | 2009-12-11 16:05 | ワイナリー訪問
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