新潟 「フェルミエ」

カーブドッチを訪問した翌日は隣接するフェルミエにうかがいました。
2006年、本多孝さんがご家族とともに開かれた新しいワイナリーです。

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建物は醸造設備、貯蔵庫、試飲スペース、ショップ、そしてレストランが
効率よく配置されたレイアウト。外観も中もお洒落です。

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まず醸造設備を見学。もう仕込み作業は終わっているので
機械は片付けられ、空いたスペースでスタッフの方がラベル貼り作業をしていました。

本多さんは以前は東京で証券マンをされていましたが、
30代でワインビジネスを始めることを決意。
それからわずか数年のうちに、みずからのワイナリーを立ち上げました。

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土地選びの際、まず頭に浮かんだのは故郷である新潟でした。
しかし、それだけではないと本多さんは言います。

「気候などの条件を調べていくうちに、ここはかなり良いぞと思ったんです」

取り出したのは数ヶ月ごとの全国の降水量分布図。

新潟市中心街から日本海沿いに西へ。佐渡島の向かいに位置するこの土地は
地図上では、なだらかで小さな突起のように見えます。

「見てください。ここだけ雨が少ないでしょう?」

確かに、どの時期も周辺の土地に比べて降雨量が少なめ。
ピンポイントのように、突起の部分だけ色が違う時期もあります。
特に5月から7月にかけての梅雨どきに、雨が少ないのが特徴的です。

「日照時間がとにかく多いんですよ」

冬もそれなりに気温は下がりますが、大雪が降ることもありません。
一方、夏は気温が30度以上まで上がることも日常的だそうです。

海が近いため、夜温が下がりにくいのが難点だそうですが
それでも降雨量の少なさはワイン造りに関しては、かなりの利点。
台風の被害もほとんどありません。

そんな話をしながら、建物の目の前にある畑も見せていただきました。

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広さは現在0.4ヘクタール。
植えられているのはアルバリーニョとカベルネ・フランです。

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まだ数年の樹齢ですが、しっかりと大地に根づいています。
整然と世話された様子からは、本多さんの真面目さと情熱が伝わってくるようでした。

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「畑の仕事も独りだと大変ですね」

「いえ、楽しいですよ。剪定なんかは特に好きです。」

「大事な工程ですよね」

「ええ。だから人にはやらせたくないんです。」

「この樹は今度、ここをこう切って…」と語る口調からは
これから成長していく葡萄への愛情が感じられます。

最後に建物に戻って、試飲をお願いしました。

ツヴァイゲルトレーベは柔らかながら、しっかりした酸が魅力的。
果実味も強く、2つの要素のバランスは見事に均衡しています。
もう少し時間が経って全体が丸みを帯び始めたら、
より素晴らしいワインになりそうです。

カベルネ・ソーヴィニヨンのロゼは、品種の特徴を反映して
骨格の強さが感じられる、かなりドライなタイプ。
冷やして軽く、というよりも食中酒としてじっくり楽しめそうです。

果実味の素直さがチャーミングですが、
瓶詰め直後はやや発泡感もあり、より気軽に飲めるタイプだったそう。
でも現在のしっかり型の個性もイイ感じです。

そしてさきほど見たばかりのカベルネ・フラン。
太い背骨が真っ直ぐ通った、芯の強さが伝わってきます。
土、スパイスの香り。フランの特徴としてよく言われる
植物的なニュアンスは最初、あまり感じられませんでしたが、
グラスに注いでしばらく経つと、爽やかなハーブのような香りがほのかに立ってきました。

ポイヤックのワインをイメージするような味わい。
無理して造った「強さ」ではなく、風格すら感じさせます。
この骨格や筋肉に、もう少し丸みのあるふくよかさがあれば
鬼に金棒といったところでしょうか。

某有名ワインライターも、このワインをいたく気に入って
個人的に買いたいと申し出てきたそうです。

「本多さんにとって、新潟のテロワールとは?」と尋ねたところ
「カベルネ・フランですね」という答えが返ってきました。

実はワタシは、本多さんはフランス的、あるいはヨーロッパ的なワインを
目指しているものだと勝手に思い込んでいました。
それは前述したようなワインの味わいからの想像だったのですが、
今回、話をお聞きして誤りだったことに気づきました。

「新潟の食、日本の食に合ったワインを造りたいんです」

繊細な和の料理に合わせるには、やはり繊細なワインが不可欠なはず。
しかし、この繊細さは線の細さとは決してイコールではない。
おそらく本多さんの頭にあるのは、そんな理念なのでしょう。
これは日本ワインの未来にとって、非常に重要なテーマなのかもしれません。

「今度、親しくしている寿司屋さんにワインを持ち込んで、飲んでみようと思うんです」

そう言って見せてくれた品書きには、地上がりの新鮮な魚を使った料理の横に
本多さんの手書きで、ワインの銘柄が書き込まれていました。

「白身にはバッカス、牡蠣にはシャルドネ。アナゴにはピノ・ノワールがいけそうそうかな。」

本多さんには以前、イベントで何度かお会いしたことがあったのですが
今回、ゆっくりお話をうかがうえたことは、とても貴重な経験となりました。
やっぱりワイナリーは、行ってみると必ず発見があります。

お話を聞いた後はレストランで、イタリアンなランチ。ウマイっす。

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試飲として、シャルドネやバッカスもいただきました。
2008年のバッカスは無補糖で醸造できたそうです。
やはり芯のしっかりしたワインでした。

追加でカベルネ・ソーヴィニヨンもグラスで注文。
ぜいたくで楽しいランチとなりました。本多さん、お世話になりました!
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by inwine | 2009-12-06 10:50 | ワイナリー訪問
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