佐藤ぶどう酒の次は大浦ぶどう酒へ。 創業は昭和14年。やはり70年という長い歴史を持つ醸造所です。 ご案内いただいたのは、4代目・大浦宏夫さん。 当時、赤湯の町では金が採掘されており、もともとは金目当てでこの地を訪れた山梨の人が 葡萄の苗木を植えたとされているそうです。 この時期、仕込みは完全にお休み中。機械もすべて片付けられているため 外から様子をのぞきながら、写真を使って紙芝居風に醸造工程を説明してもらいました。 さらにセラーも拝見。 貯蔵中の樽の周囲には瓶詰めされたワインが整然と積まれています。 清潔で、とてもいい雰囲気の場所でした。 さて、ワイナリーの入口を入ってすぐにある試飲コーナーへ。 壁にはさまざまな種類のボトルがずらりと並びます。 「これからは少し種類を絞ろうかとも考えています。」と大浦さん。 現在、扱っている葡萄はセイベル9110、デラウェア、ベリーA、甲州、ブラック・クイーン、山葡萄、 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シャルドネ、リースリング、ナイアガラ、キャンベル・アーリー。 さらにサクランボやラ・フランス、りんごも醸造しつつ、それらの果実のジュースも作っています。 もちろんひとつの品種につき、一種類というわけではありません。 甲州はSC(スキンコンタクト)、SL(シュール・リー)と醸造の違いで別々の銘柄が出ているなど、 造り手としてのこだわりもみえます。 これだけいろいろな種類があれば、仕込み期間は目が回るほど忙しいはず。 スタッフは8人ほどいらっしゃるようですが、決して多いとはいえないでしょう。 見学にお邪魔している間、何人かの方にお会いしましたが、 皆さんにっこり笑って挨拶していただいたのが印象的でした。 大浦さんももちろん、どなたも本当に感じの良い方ばかりです。 最初にいただいたのは白ワインと同じ醸造フローで黒葡萄を醸したブラッシュワイン、『ブラッシュベリー』。 名前の通り、葡萄はベリーAです。鼻を近づけると、この品種独特のイチゴっぽい香りがすぐに立ち上ります。 やさしい甘さが魅力的ですが、山形らしい酸がしっかりとあり、輪郭はぼやけていません。 非常にチャーミングなワインでした。 『バレルエージング・メルロ 2004』はワイナリーのフラッグシップのひとつ。 ほどよい樽の風味、シルキーなタンニン、豊かな果実味がバランスよく溶け合ったスケールの大きなワインです。 やはり葡萄の充実した完熟がはっきりと伝わってきます。 このシリーズは国産ワインコンクールの受賞常連。確かに見事なクオリティです。 『セパージュワインシリーズ』は『バレルエージングシリーズ』よりはリーズナブルな価格帯ですが、 こちらもかなりの実力派。 メルロ独特の黒い果実の香りが鼻をくすぐり、厚みのあるボディを持ちながらも 楽しくスイスイと飲めそうなチャーミングさも持ち合わせています。 美味しい! 思わず2本ゲットしました。 ボトルの裏には「1~2時間前に開けてください」の文字が。 確かにその後家で空けたとき、抜栓後すぐはタンニンの主張がやや強めに感じました。 ただし一杯飲む頃には、果実味とうまく溶け合い、バランスよく変身。 うーむ、ボトルに書いてあった通りです。 『エレガンス 赤』はワイナリー販売限定。カベルネ100%ですが、樽はかけていません。 ぶどうの素性を知るにはこういうまっさらなワインが最適です。 試飲させてもらうと…。 おおー、ウマいです。 カベルネにありがちな青さがほとんど感じられません。 このぶどうで作られるワインは樽熟成の行程を経るものがほとんどですが この『エレガンス』からは、本来の品種の香りというものを改めて感じることができます。 逆に言えば葡萄に自信がなければ、こうしたワインは造れないはず。 このほかにもさまざまなお話を聞かせていただきながら、 たくさん試飲をさせてもらい、やや酔っ払い気味に。 大浦さんの誠実そうな人柄は、ワインのキャラクターそのもの。 どのボトルにも親しみやすい楽しさがありました。 さて、タクシーを呼んでいただき、最後の目的地を目指します。 大浦さん、お世話になりました。 須藤ぶどう酒工場は赤湯のワイナリーの中ではひとつだけ離れた場所に位置します。 母体は紫金園という観光ぶどう園。 家族経営で生産量はごくわずか。ネットでは年間3キロリットルという記述もありました。 ボトルにして数千本というところでしょうか。 ご案内していただいたのは、醸造を担当される須藤氏の奥様。 「お父さんが全部ひとりでやってるのよ~」と明るくお話を聞かせてくれました。 こちらでも醸造所やセラーを簡単に見せていただきました。 歴史を感じさせる風格です。 目に付いたのは、このバスケットプレス。 今もバッチリ現役。すべてこれで搾っているそうです。 やるなー。まさに手作りの魅力です。 入口の樽の前で、お話を聞きながら試飲。 リースリングを使った『南陽ワイン』は柔らかな酸と甘みが魅力的。 キリッと冷やして、すっきりと飲める楽しいワインです。 『赤湯ワイン』の葡萄品種は甲州。 シャープなリンゴ酸が爽やかな、山形らしいワインです。 山梨の甲州とはやはり一味違うのが楽しい。 面白かったのは次のワイン。 試飲の際、「品種はなんですか?」とお聞きしたら、 「何か当ててみて」といたずらっぽく言われてしまいました。 甘みの強い味わいに、深く考えずにラブルスカ系の何かかなと思ったのですが、 正解は「マスカット・オブ・アレキサンドリア」。 いわゆるマスカットです。 生食用の中には一房ウン千円もするものもある高級ぶどう。 たしかポレールのやつを飲んだことがあるような気がしますが、 あまりワイン用として使われることはないはずです。 「ホントはワインにするのはもったいないんだけどねー」と須藤さん。 すっきりとした甘さが魅力的。素直に美味しいです。 こちらのワインの特徴はなんといっても、すべて自家栽培の葡萄であること。 広々とした葡萄園には、さまざまな種類が栽培されています。 多くは生食用ですが、ワイン用品種も樹齢が高く、立派な木ばかり。 長い歴史を持つ葡萄園ならではの強みです。 これはマスカットベリーA。長い時を経て、まさに「木」となった迫力ある姿です。 雨の中、少し歩き回らせてもらいました。 「最後にお写真を一枚」とお願いすると、ポーズまでとってくれました。 須藤さん、楽しい時間をありがとうございました! 赤湯ワイナリーめぐりはこれで終了。さあ、温泉入って生ビールだ! アレ?
by inwine
| 2009-07-14 13:07
| ワイナリー訪問
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