すっかり梅雨本番です。でも雨にも負けず山形へ行ってきました。 まず最初に向かったのは高畠ワイン。 ワイナリー主催のテイスティング会に参加させていただきました。 会場は高畠駅近く、童話作家・浜田広介の記念館です。 40人ほどの参加者を前にまず奥山社長、さらにコメンテーターの橘勝士さん、 川邉久之さんの挨拶で会はスタート。 製造グループ・マネージャーという肩書きの畑さんの解説を聞きながら、 6種類のワインをテイスティングします。 ちなみに畑さんによれば今年の気候は雪が少なめ、気温は平年より1度ほど高めで 降水量は少なめ、日照時間もやや多め。 葡萄の生育は、今のところとても順調だそうです。 今回のラインナップは下記の通り。 ------------------------------------------------------------------- シャルドネ樽発酵ナイトハーベスト 2006 シャルドネ樽発酵ナイトハーベスト 2007 シャルドネ樽発酵ナイトハーベスト 2008 高畠プレミアムブレンド 2006 高畠プレミアムブレンド 2007 高畠プレミアムブレンド 2008 ------------------------------------------------------------------- 2006年のナイトハーベスト以外は未発売のアイテムです。 深夜に(最近は明け方だそうですが)葡萄を収穫することで知られるプレミアムワイン、 ナイトハーベスト。 3種類のグラスを並べてみると、明らかに2007年だけ色調が薄めです。 樽の影響かと思い、あとで畑さんに聞いてみたところ 「自分では9月の夜温が上がりすぎたせいだと思っています」という答えでした。 (ただし樽熟期間が短いのも確かだとのこと。) この07、アルコール度数はなんと14.2度。 ボディはかなりしっかりしていて、濃厚な果実香が印象的です。 補糖はまったくしていないとのことで、ちょっと驚きでした。 2006は樽の風味が最もしっかりと感じられました。その奥にやはり厚みのある果実とナッティなフレーバー。 新樽はほとんど使っていないそうですが、オーク香の好きな人にはたまらないはず。 実際、参加者の中にもこのワインをお気に入りに挙げる方が何人もいらっしゃいました。 私自身が一番好みに感じたのは2008。 暑く、雨の少なかった気候を反映してか、熟した白桃のようなこってりと甘い香りが実に魅力的。 そこに一本筋の通った骨格のある酸がバランスよく共存しています。 現在はまだ熟成過程。これはスケールの大きいワインになりそうです。 今からリリースがとても楽しみになりました。 それにしても、やはりどのヴィンテージもさすがのクオリティです。 「夜の収穫」という話題性も楽しい。 これからもずっと日本を代表するシャルドネのひとつであり続けるはずです。 夜間の収穫作業のメリットとしては収穫時に葡萄の温度が下がっている点や 糖度が上がっている点などがよく言われます。 さらにカリフォルニアで長くワイン造りに携わっていた川邉さんからは、 意外な効果についてもお話がありました。 ポイントは夜の「暗さ」。収穫スタッフがムダ話をせずに作業に集中するため、 昼よりも効率が上がると言われているのだそうです。 なんだか笑い話のようですが、カリフォルニアのワイナリーでは そうした効果を狙って、収穫以外の作業も夜間に行うことがあるとのこと。 プレミアムブレンドの使用品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、プティ・ヴェルド。 比率は年によって違いますが、いずれの年もプティ・ヴェルドが30%前後と、 一般的なボルドーのワインよりもかなり多く使われているのが特徴です。 さらにこのワインが個性的なのは「混醸」である点。 つまり各品種を別々に仕込んでブレンドするのではなく、異なる品種を混ぜて醸造しているわけです。 理由はきわめて実際的なことだそう。けれど結果的に後でブレンドするよりも 各品種が互いの足りない分を補い合うような効果が生まれているというお話でした。 2008年はまだMLFが終わっていない段階での試飲でした。 そのためまだ酸味や渋みが明らかに強め。ただ果実の完熟感やボリュームの強さははっきりと感じられます。 2007年はタンニンが印象的なボディのしっかりしたワイン。 個人的に最も感銘を受けたのは2006年でした。 エッジにややオレンジを帯び始めていて、熟成とまではいきませんが こなれた風味が生まれつつあり、エレガントでバランスのよい味わいです。 こちらもリリースが楽しみ。 テイスティング終了後は、場所を移して昼食をいただきました。 私の席の前は奥山社長。ここではざっくばらんなトークが聞けて楽しかったです。 その後はシャルドネの畑へ。 ナイトハーベストに使われる葡萄の畑は何ヶ所かあり、いずれも棚栽培です。 土壌のベースは微細な孔が無数に空く高畠石。 この石に含まれるゼオライトという物質は保水性と透水性を兼ね備え、 さらにイオン交換を活発に行うことで、優れた土質を作り出しているそうです。 山形のワインは全般的にしっかりした酸が特徴的。 その中でも高畠石のミネラル分は、酸の味わいに独特の個性をもたらしていると畑さんは言います。 ワイナリーに戻って、東京でお世話になった営業の方々にご挨拶。 さらに3年前に植えたというワイナリー前のピノ・ノワールの畑も見せてもらいました。 畑さんが最も好きだという葡萄です。今年、初めて収穫できるかもとのことでした。 地面の上には高畠石をはじめ、さまざまな石がゴロゴロと。 これらの石が風化することで、土壌をゆっくりと形成していくわけです。 その後、畑さんに別の畑も案内してもらいました。 訪ねていくと、ちょうど農家の方が作業中。 ご挨拶をして畑の中を見せていただきました。 立派な幹に、太い葉脈の見事な葉。下草もいい感じで生い茂っています。 土質はさきほどのシャルドネ畑とは少し異なり、やや粘土質です。 お隣の畑で作業していた方から、デラウェアを分けていただきながら 冬場の雪の苦労や獣害についてひと談義。 クマもわりと普通に出没するそうです。コワ…。 赤湯の宿まで車で送っていただく間も、栽培・醸造について 畑さんにいろいろなお話をうかがうことができました。 熱心な研究者肌といった印象の畑さん。 こちらの質問にひとつひとつ丁寧に答えていただき、感激でした。 本当にお世話になりました。ありがとうございます!
by inwine
| 2009-07-11 11:39
| ワイナリー訪問
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